お見合い、それから戸惑い-2
初めての顔合わせの日…。私は母によってコーディネイトされた完璧なお見合いファッションで、設定された市内の高級フレンチレストランへ、とぼとぼと一人向かった。通りに並ぶお店のウィンドウに映る自分の姿を見て、思わず足を止める。光沢のあるふんわりとした淡いピンクのワンピースに、細身の白いジャケット。手には小さなバッグを持ち、ピンヒールの黒いバックストラップの靴を履いている。髪はミルクティーベージュにカラーリングされ、毛先には軽いパーマを。
―なんだこりゃ…。
ジーパンの上に何か着ればそれで良いか…という普段の私とは、似ても似つかない私がそこにいた。
―これって本当におかしくないのかな…。違和感しかないんだけど。
ガラスに映る私を見れば見る程、何だか体のそこら中がちくちくする。やっぱり辞めれば良かったと後悔しながら、ずるずるとまた歩き出した。ぽかぽかとした暖かい陽気とは裏腹に、私の気持ちはどんよりと曇り、足に食い込むストラップが、まるで私を引き止めているように思えた。
市内では名高い高級フレンチレストランだけあって、店内はほとんど満席らしく、何組も外で待っているようだ。もちろん今日は予約済みなので、入り口で名前を告げると中に通される。ガラス張りの店内は明るく、モノトーンの落ち着いた色合いが高級感を感じさせた。普段の私なら、何の関わりも無いお店だったろう。慣れない高めなピンヒールが毛足の長い絨毯に絡められ、足元が覚束ない。歩き方だけに注意していると不意に、「こちらのお席でございます。」と、声が掛かった。顔を跳ね上げると、まだ席には誰も居なかった。少し安堵する。言われるがままに席につき、出されたグラスの水を一気に飲み干した。
―こんな所で、一気に飲んだら恥ずかしいのかな?どうしよう、お手洗いとか行っておいた方が良いの?そうだ、お化粧崩れてないかな…。