「雨のち虹」第2話「ヒーロー・andブラッククロス」-12
「…水綺さんは、どう思うかな?」
「私は‥先輩を信じてますから、それに、
誰にでも知られたくない本音とか過去とかあると思うし、
別に無理に聞かなくてもいいです
それに、先輩に嫌われたくない‥なんだか、嫌われちゃいけない気がするから‥」
私は先輩が必要な存在であるかのように思えてしまう、何となくだけど
正確には酔っていたのかもしれない‥
学食で泣いた事は今思えば恥ずかしい
それでも先輩の言葉に癒されて、また後押しされてここに来た訳だし、
何より先輩の心の甘さが私の心の隙間に入りこんだようになってしまっている
先輩が頭を撫でてくれた安心感が
だらだらと生ぬるく
未だに残っているように感じられた
洗脳とまでは言わないでも麻痺していた私の心に先輩という存在が染み込むのは意外に早かったみたいだ
「すずめは‥今、混乱してるからそう言えるけど、もし先輩が
危険だったら‥余計に悲しむのはすずめなんだよ!?」
「蛍ちゃん‥」
私を思ってくれての
行動なのに・・なんだか無性に悲しさを感じる
「いいすぎだ!落ちつけよ蛍!」
そして明君が仲裁に入ったと同時に胸の中に重苦しい感情が渦巻く
私のせいなんだろうか
私が巻き込んだせいで2人は悲しい顔をしているのかな‥?
そう思いながら
涙がこぼれそうになるのを押さえる、
もしここで泣けば2人は余計に‥悲しむから
そうやってあれこれ私が考えている内に蛍ちゃんが決定的な一言を放ってしまう
「明は黙ってて!私は正直‥先輩がやった事は正気の沙汰とは思えない!」
蛍ちゃんが叫んだ瞬間場が凍りついたように止まった‥
私はこの空気が怖くて思わず身震いしてしまう
そしてその痛いほどの沈黙はしばらく続き
意外な人物によって破られた
「いい加減にして」
透き通った、それでいて泣きそうな声だった
声の主は部屋の隅で
ずっと話を聞いていた天音先輩だった
「‥え?」
蛍ちゃんが呆気にとられている‥
もちろん私も‥
「空は‥優しいよ‥」
ついさっきまで私達を追い回して遊んでいたいかにも純粋そうな
天音先輩が私達に対し怒りと悲しみが混じった表情を向けている
私は、いや、
多分蛍ちゃんも‥
ショックを受けていた
天音先輩は泣きながらこっちを見て叫ぶ