友情の方程式2-2
北川は相変わらず、相槌だけを打っていて話を展開させる気はなさそうだ。
以前、加藤が言っていた。
『あの人、恥ずかしがり屋だから話すのが苦手なんだって』
だから、いつも加藤が一生懸命、話をふるってわけか…
それってどうなんだろ?
男女の仲になる前に、一人の人間として…
ホントに加藤の好みは分からない…年上が好きだと言っておいて、彼氏は同い年だし…
俺は二人を見るのを止めた。
阿呆らしく思えたから。
そして再び、晶のことを考え始めた…
電車に乗って30分。晶の家の最寄駅に着く。
降りる時に隣の車両を見る。
もうあの二人の姿はなかった。
駅から歩いて10分ほどのところにある閑静な住宅街。
その中でも、一際目立つように花が飾られている玄関。季節に合わせて花の種類も変えていると、世話をしている晶が言っていた。
玄関の前に着き、インターフォンを鳴らす。時間は5時過ぎ。丁度いい時間だ。
『はぁ〜い』
ドアが開く。中から、エプロン姿で、迎えてくれる晶。
『あ、かーくん。いらっしゃい。さぁ中に入って。』
手招きする晶につられて、中に入る。
その姿が可愛かった。
あぁ…俺は幸せだなぁ。そう思いながら、晶の方へ向かった。
『どうしたの?最近なんか楽しそうだね』
シチューを食べながら晶が尋ねてくる。
今日の夕食は、シチュー。もうすぐで夏だというのに、なんでシチューと思ったら、牛乳の期限が今日までで、残っていたから、らしい。
『…そう?』
俺もシチューを食べながら答える。相変わらず旨い。付き合い始めて1年。最初は、会話すらままならなかったが、最近はよく話すようになった。
『そうだよ〜前までは、学校に行くのがしんどいって言ってたのに。最近じゃ、結構楽しそう。』
くりっとした大きな目でこっちを覗き込むように見る。大きな目と言っても化粧でそう見えるわけではなく、元から。彼氏の俺がいうのもあれだが、晶は美人の分類に入ると思う。ただ、打算的なとこがあるのが残念だけど。
『…そっかぁ?まぁ最近面白い奴と話すようになったしな。』
一緒に作ってもらったサラダを口に運ぶ。
『面白い奴?どんな人なの?』
興味津々に聞いてくる。
『ん〜男勝りな奴』
『え?女の人なの?』
『あぁ、そうだよ。ごちそうさま。』
サラダを食べ終わり、食器を流しに持っていく。いつもの癖だ。晶にはしなくていいと言われるが家でしていたら、どうしてもそうなってしまう。
『そうなんだ…』
少し表情が曇る。
『何?ヤキモチ?』
からかってみる。
『ちっ違うよ!なんか楽しそうだなぁって思っただけ!』
ごちそうさま、と晶も片付け、居間にあるソファに座る。
俺も隣に座る。
『正直に言ってみな?』
晶の自慢であるロングヘアーを指で梳きながら尋ねる。
『ホントは…ちょっとだけ。』
照れながら、俺を見る。
『可愛いなぁ』
『からかわないでよぉ!』
ぷぅっと頬を膨らませる。そんな態度が、俺の中の”男”を駆り立てる。
『からかってないよ』
ちゅっ。軽く頬にキスをする。
『ホント?』
『ホントに。こんなことをするのは晶だけだよ』
晶を抱きしめる。
それからしばらく、二人は言葉を交わすことを止めた−