ふたり【大・波乱】〜涙×2〜-2
「──ユキっ、…ユキ?」
「……ん?」
「もう……またボーっとしてる。……ねえ、今なに考えてたの?」
「え?………」
「…あかねのこと?」
「ん……うん」
……まただ……
なんで……なんで、そんな顔する? …そんな顔、見たくない。
俺は、エリカの頬を軽くつまんで、ぐいんぐいん動かした。
「や〜め〜へ〜よ〜〜」
「…エリカ」
言うと同時に手を離す。
エリカは頬を押さえて上目使いで俺を見る。
「約束、…して。………もう、…泣きそうな顔…しないで」
「ユキ……」
「エリカの、……そんな顔…見たく、…ない」
エリカは、下を向いてしまった。
「………泣きたいなら大声出して泣く! 笑うんならうるさいくらい笑う! それが、エリカだろ?………なぁ、エリカは……エリカのままで、いてくれよ」
…涙が、こぼれた。
……ったく、我ながら情緒不安定だ。
「……………」
顔を上げるエリカ。
エリカは、俺と同じみたいにボロボロ涙を流している。
「うん。…約束、する」
そう言ってエリカはぎこちなく笑う。
「……この、泣き虫」
「……ユキだって」
エリカの頬を両手で拭ってやる。
「いくぞ」
俺はエリカの手を取って歩き出した。今度は、空いた腕の袖で自分の顔を拭った。
後ろを振り向いて誰もいないことを確認する。
ズッ、と鼻をすすって俺は言った。
「エリカ。」
「ん?」
「俺、……笑ってるエリカが好き。」
俺は前向いてたし、エリカも何にも返事しなかったから分からないけど、きっとエリカは俺の好きな笑顔だったと思う。
【大・波乱】
つづく