ふぉあしーB〜黄昏に揺れる影〜-4
「俺に何か言いたいことがあるんじゃないんですか?」
「えっ、その……分かる?」
「はい、なんとなくですけど…」
俺は相手の表情を見ることができないので、ちょっととした口調の変化、その場の雰囲気などから総合的に相手の気持ちを考えて会話をしなければならない。
だから俺は相手の様子の些細な変化を敏感に感じ取ることができるようになったんだ。
「今週一週間ずっと晴れだって」
「はい?」
「ってことは今週の日曜も晴れだよね?」
「多分そうだと思いますけど…」
咲姫先輩は何が言いたいんだ?
「駆は日曜暇?」
「特に用はないです」
あ、もしかして…
「じゃあ日曜に二人でどこか行かない?」
やっぱりそうきたか。
俺には断る理由なんてないし、そもそも咲姫先輩のお誘いを断ることはできるはずがない!
となると俺の返事はもちろん…
「はい!喜んで!それでどこに行きます?」
「えっとね…実はこれをもらったの」
咲姫先輩は口で「じゃーん!」と言いながら、カバンから何かを取り出したようだ。
「で、それは何なんですか?」
「あ、ごめん。見えなかったんだよね。これはテーマパークのペアチケットなの」
「テーマパーク……ですか?」
「最近オープンした『スペースマリンランド』っていうテーマパークなんだけど、知らない?」
「聞いたことないですね…」
俺は世間の出来事に疎いからなあ〜
今の総理大臣が誰かも知らないし…
「実物大のスペースシャトルが立っていて、その回りを回るジェットコースターがあったり、イルカのショーが見れたりするの」
「テーマパークでイルカショーですか?それは新感覚ですね。ん?」
スペースシャトルとイルカ?
それってどこかで…
思い出した!
今朝の意味不明な夢だ!
まさか夢じゃなくて『未来』だって言うのか!?
でももし本当にそうだとしたら……
「駆、どうしたの?」
「へ?あ、いえ、何でもないです」
「ふーん、変なの。あ、ここでお別れだね」
俺たちは公園横の十字路まで来ていた。
俺の家に行くにはここを右折、咲姫先輩の家に行くにはここを左折しなければならない。
「バイバイ、駆。また明日ね♪」
「さよなら、咲姫先輩」
先輩に手を振って右の道を行こうとした時、俺の背中に声がかかった。