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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-7

コツ、コツ、コツ。
夕食が済み、戸締まりなどを確認する巡回を終えて自分の部屋に帰っていく。
扉を開けて中に入り、一息ついた。
あとはキシンが来るのを待つばかり。 窓を開けて、椅子に座る。
冷たい風が私の頬を撫でた。
外には白い雪と綺麗な月だけ。
『寒い………』
自分のベットから毛布を持ってきてそれを被る。
シンと静まりかえった夜の景色をただジッと眺めていた。 ザクザクと雪を踏分て、こんな冬でも暖かい太陽のような恋人がやってくるのを。

何時間経っただろうか?
昨日の寝不足が祟って、朦朧とした意識の中で未だに私は椅子に座って外を眺めている。
毛布を被っていても寒さはいまいち無くならなかった。
いつの間にか外は雪が降っていた。
窓を開けっぱなしでいるため、部屋の温度は外と同じで、吐く息は白い。
コチコチコチと時計の針が進んでいく。
今は12時だ。
『キシン………』
今日も来ないのだろうか?
だが、私は手の中にある手紙をもう一度見る。
「今夜、お邪魔するよ。」
ずっと待っていたキシンからの手紙。 やっと告げられた再会の時。
だから、私はまだ待っている。
風が強くなってきたようだ。
部屋に吹き込む風が私の髪をなびかせて、風に乗ってきた雪が髪に付く。 もしかしたら髪が凍ったりしないだろうか?
それでも、キシンは笑ってくれたら、それも良い。

次第に体が震えてきた。
寒さのせいで。
部屋の窓際は雪が積もってしまった。 私の毛布も凍りついている。
唇が青くなっていると思う。 エルフのとがった耳も、今は何の感覚も無い。
今は体が震えている。
悲しみのせいで。
今は3時、それでも待っている。
キシンは時間にルーズだから、きっと遅れてるのかもしれない。 忘れてるのかもしれない。
雪で足を滑らせたのかもしれない。 他の女の所へ行ったのかもしれない。
かもしれないかもしれないと、憶測が頭の中に浮かんでは消える。
今は6時過ぎ、東の方にはもう新しい太陽が上りだしていた。
でも、私の太陽はまだ来ない、だから私はまだ夜の中………



バリバリに凍りついた毛布を力ずくで体から剥ぎとる。
足の方は感覚が無い。 でもなんとか歩いてベットにたどり着いた。
『………馬鹿キシン………』
手の中の手紙を握り潰し、ゴミ箱に投げ捨てた。
涙は出ない、涙腺なんてとっくに凍りついている。
そして私の意識はそこで途切れた。 寒いよ、なんでよ、馬鹿キシンの馬鹿………


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