「雨のち虹」第1話「アンラッキー」-14
今日いきなり怖い目にあったからか・・
あるいは単純に心が麻痺していただけかもしれない・・
今日1日のいつからかはわからないが・・
気が付いたら
生きる事は私にとって一人でなんでも出来る強い人になる事とすり変わっていた・・
それが強く生きる事と同義だと錯覚していた・・
だから私は先輩の質問に対し反撃してしまう「・・第一私は悩みなんてないです・・なんで悩みがあるとか・・」
すると先輩は・・
私をじっと見つめた・・目は黒というより薄い灰色の様に見えた
全て見透かしているような目・・
なんだかくすぐったかった・・
「いやぁ・・君は心の揺れ動きが激しいし
必死に自分を守ろうとしている・・それに・・
目・・悲しい目をしてるから・・つい」
実際・・すごい観察力だった、出会ってから
短時間でほとんど見透かされている・・
「そんなこと・・ありません・・」
先輩はしばらく私を見て考えていたが・・
急に思いつめたように口を開いた「泣いてるよ・・君・・
しかも自分で気付いてないよね・・」
「え・・?」
慌てて目尻に指を這わせる・・
先輩の言った通りだった、今やっと自分が泣いてると気付いた・・
「悩みがないならなんで泣いてるの?」
先輩はなかなか意地悪だった・・
「悩みはあります・・でも人に頼るつもりはないですから・・強いて言うなら強く生きたい・・」
しかし今の先輩に対して強がる事は首をしめる行為でしかなかった
「違ったら悪いんだけどさ・・・君は強がりすぎて泣いてる事に気づかなかったんじゃない?」
「・・」
事実だった・・
「私は・・」
それ以上言葉は出てこない・・
しばらく様子をみていた先輩は口を開いた・・「ぶっちゃけ僕は
胡散臭いよね?
だから無理に我が部に相談して欲しいとは
言わない・・ただ−」
「ただ・・?」
すっかり先輩のペースに巻き込まれていた・・「檻を作らないでほしいな、君が求めた
強く生きていく力は、いつの間にか強がって誰にも心配かけない事に成り代わっているんじゃないか?そのせいで誰にも頼れない」
「・・そうかもしれません・・ね」
自然と涙が溢れる・・
あまりに図星をつかれたから
実際昔から
お父さんに心配をかけず強がってごまかす事は私にとって強さを感じる事が出来た・・そうやって自分を励ましてきたのだ・・
その名残かもしれない
「いいんじゃないか?誰かに頼っても・・
君の生活はしらないけど・・きっとあまり人に頼らず生きてきたんだろうね・・
本当につらいときには周りに迷惑かけるくらい一向に構わないさ」
・・実際もう悩み相談に勝手にもってかれている私がいた・・
そして先輩は続けた・・「まぁその迷惑かける相手が僕だったらとっても嬉しいんだけど・・どうかな?」
心が少し動いた・・
「・・先輩はなんでそんなに分かるんですか?」
何気なく聞いてみた
「・・似てるから・・かな昔の僕と」
意外な答えだった・・
「先輩もあったんですか・・」
「まぁね・・おかげで
迷惑ばかりかけてるよ・・」
そういって先輩は続けた
「まぁ難しい理屈よりも誰かに頼れって事!正直強く生きる必要すらない・・
心が折れても
後ろ向きでも・・
泣き喚いても
誰かに泣きついても
それでもいいから
這いつくばって進めばいいんだよ・・多分」
先輩の言った事は私に意外と大きな効果をもたらした・・
強く・・強く・・
そうしなければいけないと思っていた
何も守ってくれる物がなくなった自分を守っていくために・・
そんなのは必要なかったんだ・・本当は
きっと気付いてたのに気付かないふりしてた・・
そのせいで意固地になって、心の檻に捕らわれてたんだ・・