「雨のち虹」第1話「アンラッキー」-11
私の生活も心も体も
いや・・私が見ていた世界が、
お父さんがいる事が前提の日常の上に成り立っていたのだ・・
それは当たり前で・・
だからこそお父さんが抜けた穴からひびが入って私の全てが流れ
落ちている、
だからこそのこの喪失感・・
きっとこの唐突な涙は 私の家族との思い出が流れ落ちているんじゃないだろうか・・
そんな事を思う・・
悲しすぎて一週間前まではただよくわからない悲しさでいっぱいだったが二週間たった今は悲しみに理由や理屈を探していた・・
本当は答えなんてないのに・・
多分理由が欲しいのは運命の理不尽さに憤りを感じているから・・
なぜなら私にはさらなる悩みが出来ていた・・
電話の留守電を調べる・・無言の履歴が30件以上・・ポストには・・
「愛してる」と書いた紙が入っていた・・
一週間前からコンビニに食料の買い出しにいくと視線を感じる・・
初めは気が病んでいるのかと思ったが
いい加減認めた・・
これはいわゆる
「ストーカー」というやつだろう・・
タイミングが悪すぎる・・だからこそ
この理不尽さに理由を探している・・それを
探してどうするかまでは考えてはいないが・・ちなみに警察には言った・・でもまともに取り合ってはもらえなかった・・ましてや親が亡くなった直後そんな不幸な事ないんじゃないかと、警察も信じなかったし何より・・
ただ不安すぎて気が動転したんだろうという判断らしい・・
だから正直不安だった・・雨と同じだ、守ってくれる物がない・・精神的に吹きさらしの状態
弘文さんだっていつもマンションにいるわけじゃない・・
誰にも頼れない・・
強く生きないと・・
そのために涙は出来るだけ流したくない・・
自分の弱さを自覚してしまうから・・結局今日も泣いてしまった訳だけど・・
しばらくして弘文さんから電話がかかった、「すずめちゃん大丈夫?色々と・・ストーカーはまだでるのか?」
弘文さんはいつもの
明るい声でいった・・
「ええ・・まだ普通に
でます・・」
「そうか、まだ・・俺がかえれたらいいんだけどちょっと忙しくて・・」
正直帰って来てくれる事を期待した・・
誰にも頼らないと決めた手前だが・・
弘文さんの力を借りれるなら借りるにこしたことはない・・
「学校に泊まりっきりで研究ですか・・?」
「そうだ・・」
泊まりっきりで研究って一体何を研究しているのだろう・・
「仕方ないですよ・・
それに・・弘文さんなんかの力を借りなくても大丈夫ですから・・」
軽く笑ってそういうと弘文さんは大げさに驚いた
「相変わらずキッツいなー!すずめちゃんは、でもまだ元気そうで安心した・・・」
「そうですか・・・
ああ・・もう行かないといけないので・・」
「今日は入学式だっけ?まぁ気分転換には
丁度いいか!」
「まぁ・・それなりに楽しんできます・・」
そう言って家を出た・・精一杯強がってしまった自分に・・寂しさを感じた・・
私は髪をまとめて出かけた・・
お父さんの形見であり最後のプレゼント・・
天使の羽根の飾りがついた金属製の髪留め・・そういえばお父さんはお母さんがこういうのが好きだったと言っていた、お父さんはお母さんと私を重ねている面があった・・だから私がある程度大人になった今、試しに渡してみたのだろうか・・・
ぼんやりとそんなことを思ってる内に学校についた・・そして入学式
入学式は非常に切なかった・・ほとんどの生徒が親と来ているからだ・・
中学の友達もいたが・・みんな家族が来ているし・・邪魔するのは悪いと思ったので話かけられなかった・・話かけても同情の目で見られるだけだし・・