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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第三章』-3

………オレ?
オレは後半途中で交代。単純な体力不足だ。情けない。
だがパスはほとんどカットされなかったし、シュートだって決めた。他がすごすぎたんだ。
そんなこんなで、オレ達はいつの間にか準決勝まで進んでいた。
ちなみにバレーは五組は全滅。一組のAが圧倒的らしい。
それもそのはず、運動能力は必要以上、力は男よりも強く、その不道理さは規格外の四世家の長女、四世春夏がいるのだから。
加えてあの有名なエースアタッカーがいるらしい。
「お前んとこの姉ちゃんすげぇなぁ。」
笑いながら宗宮が言った。
宗宮は姉貴の出た試合を見てきたらしい(可愛い子を探すついでに)。
姉貴はまるで、東洋の魔女だったそうだ。
確かに、姉貴はすごい。五十メートルは六秒台前半で走れる。握力は三十キロある。空手の有段者だし。
「自慢の姉だなぁ、おい?」
宗宮が言った。
自慢、ではない。
人に見せたくない。
オレは姉貴を………、
「ずっと見てきたからな。姉貴がすげぇのはわかってる。」
胸が痛い。わかってる。何が原因か。わかった時は苦しかった。理解できなかった。オレはいつの間にか…、
「暴力は振るう、常識を知らない、最低な姉だよ。」
姉貴を、好きになっていたんだ。



………わかってる。そうさ、姉なんだ。
四世春夏は、実の姉。双子の姉。
報われない事を…オレは続ける気か?
「………秋冬君…?どうしたの?」
「っ……。」
千里の声が、オレを現実に戻した。
「なんでもない。」
準決勝からは明日行われる。実際、すでに三時を過ぎている。
教室に戻り、あいさつをして帰り支度をする。
「なぁに帰ろうとしてんのぉ?」
千里がオレの顔を覗き込んだ。
「今日は仕事入ってるよ?」
「そっか。どんな仕事なんだ?」
千里はニヤッと笑う。
「明日のクラスマッチ表彰式の打ち合わせだよ。」
そんな事までやるのか!?千里はものっ凄い学校に信頼されてるんだな………!!
「この学校は色々人が足りてないからね。放送部は二人しかいないから、僕がサポートしてるんだ。」
なんか……千里はすごいな。
オレ達は廊下を歩き始める。前から誰かがきた。どうも、姉貴のような感じだ。
「あっ…秋冬っ!」
やっぱり姉貴だ。隣りには………、おうっ、エースアタッカー様の登場だ。
「よう姉貴。」
「紹介するねっ。この子は同じ一組の柚木梓(ゆずきあずさ)ちゃん。可愛いでしょぉ?」
いや、姉貴にそんな自信満々に言われてもな。まぁ、紹介されたんだし、挨拶はしとこう。
「ども、はじめまして。」
「はじめまして。あ、こっちは幾間千里君だ。いつも見てるよ。」
「えっ!?」
千里の顔がパッと明るくなった。
「えぇ、バレー部とかにきてるじゃない。ちっちゃくて可愛いわね。」
千里の笑顔が、少し、ほんの少し陰った。
恐らく、可愛いと言われて、『恋愛対象じゃないですよっ。』と言われた気がしたのだろう。
「あぁ、姉貴。友達の幾間千里な。よろず部の部長さんだ。」
「あぁ、君が…。」
姉貴が千里に左手を差し出した。握手でもしようってか。
ん……?どっかで聞いた事あるな。握手の時に左手を出すのは、喧嘩売ってる証拠だって。……本当かどーかは知らないけどな。
千里もなんか微妙な顔してるし。『なんで左手出してんの?』ってな感じだ。


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