全てを超越『2』-3
「あら、もう帰るの?」
「いや……」
ホントにいたよ……。
「…なんでここにいんの?」
「言ったじゃない。夕方に会いましょうって」
「で、夕方までここにいるつもりだったのか?」
「そうなるかしら」
おいおい。まぁ、そのおかげで俺のバイクは無事だった訳だし。感謝するべきなんだろう。
「で、どうするんだ?」
「何が?」
「俺がここにいるんだから、夕方までいる必要もないだろう」
「じゃあ、返事をくれるのかしら」
そうか。そうだよなぁ返事しなきゃいけないんだった。
うーむ。
「……朝霧はなんで俺に告白なんかしたんだよ」
「君が好きだから」
こ、これまたストレートに…。
「いや、好きになった理由とかは?」
「君だから」
「…………」
「少なくとも、君と話した僅か数回の逢瀬の間に、好きになったんだと思う。理由なんて、あとから幾らでも作れる。けど、君へのこの想いは理由なんてないし、理屈もいらない。私にとって、この想いはこの世の全てを超越しているの」
彼女は表情一つ変えずに、それでいて真剣に…真っすぐに俺へと言い切った。