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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-10

B 幽霊は一度憑くと離れない
 幽霊三か条は僕の中で大きなものだった。ルイとは一生このままなのだろうか。何よりもルイ自身はそれでいいのだろうか?一度ルイと話してみる必要がある。
 午後6時ごろになって、スーパーの袋を抱えたリカが僕の部屋を訪れた。ルイはリカが来る1時間も前に僕の部屋を出ていた。
 「おめでとう!さっそくカレー作るね。今日はいつもより張り切るから」
 そう言うと、リカは早速キッチンに立ちカレーを作り始めた。リカがキッチンに立っている間も俺は今後のルイについて考えていた。
 カレーを食べ終わるとリカは少し真剣な顔で話し始めた。
 「内定はもらったし、後は、卒業とその後は、結婚ね。・・・リクの両親にも私の両親にも結婚は了承済みだし。いよいよって感じだね」
 「そうだな」
 「ねえ・・・」
 リカはさらに真剣なまなざしになった。
 「本当に結婚してくれる?」
 「当たり前じゃないか。内定をもらったとき真っ先に頭に浮かんだことは、リカと結婚できるってことだよ」
 「そっか、よかった」
 リカは心底安心した表情になり、僕に笑顔を見せてくれた。
 「最近ね、リクが私と一緒にいてもどこか上の空って言うか、違うこと考えているように見えて心配だったんだ」
 リカのその言葉を聞いて、僕ははっとした。僕が彼女にそんな思いをしていたなんて気がつかなかった。それよりも僕がリカといるとき違うことを考えているような態度をしていたことに驚いた。違うこと・・・それは紛れもなくルイのことだった。
 その日、リカが帰って30分ほどしてからルイが戻ってきた。
 「楽しかった?」
 「ルイ。話があるんだ」
 ルイも僕の真剣さを理解したのか何も言わずに白いテーブル挟んだ向こう側に座った。
 「僕の田舎にね、幽霊三か条って噂みたいなものがあるんだ」
 「幽霊三か条?」
 ルイはその単語にか、話の内容にだろうか、どっちにしろ目を丸くしていた。
 「そう。こういう内容なんだ。
@幽霊は煙草の煙が嫌い
A幽霊は一度憑くと離れない
B幽霊は・・・・」
 「幽霊は?」
 「実は三つ目は覚えていないんだけど」
ルイは思わず噴出したように少し笑った。しかし、すぐに真面目な顔に戻った。
 「これが事実だと、ルイは僕から離れないってことになる。つまり、ルイは僕って言う呪縛にとらわれたことになる」
 ルイは大きく深呼吸をした。
 「何が言いたいの」
 「ルイを自由にしたい。どうすれば、君は自由になれるんだ」
 ルイは少し考え込んでいるようだった。ルイが次の言葉を発するまでひどく長い。それが、何時間にも感じられた。
 「それは、私が一番わかっていること。あなたが、私を邪魔だというのなら、私はあなたの前から姿を消すわ」
 そう言って、ルイは立ち上がった。
 「何もそんなこと・・・」
 僕はルイを止めようと思い、彼女の腕をつかもうとした。しかし、こんなときに限って彼女の腕を僕が捕らえることは叶わなかったのだ。彼女はそのままアパートのドアをすり抜けて出て行ってしまった。
 それ以来、僕はルイを見ることはなくなってしまった。
 
 僕はルイの存在が煩わしかったのかもしれない。
 ルイを自由にしてやりたいのじゃなくて、僕がルイと言う足かせから、ただ単に解放されたかっただけなのかもしれなかった。しかし、ルイが僕の前から姿を消してから、僕は何か大切なものを失ってしまったような感じにとらわれるのだ。ルイが消えた、6畳の僕のアパートはただ単にだだっ広い空間に成り下がってしまった。
 僕はルイを忘れられないでいる。


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