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銀の羊の数え歌
【純愛 恋愛小説】

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銀の羊の数え歌−20−-2

やばい。このままいけば八時を回ってしまう。
僕は慌てて携帯と紙袋を持ち替えて、
「真壁。すまん。俺、急いでるんだ。あとでこっちからかけなおすよ」
と走りだした。
「おい、藍斗。今、どこにいるんだ」
こっちが急いでいるって言っているのにもかかわらず、ヤツは相変わらずゆったりとした口調で続けた。僕は点滅してしている信号を無視して、横断歩道を横切った。
目の前に見える、あの角を右に入っていけばもうすぐ駐車場だ。
「駅前だよ。これから病院へいくんだ」
「そっか。それじゃあ、俺の家には十分もあればこれるな」
「おいおい」
さすがに半分いらだちながら、僕は苦笑した。こいつ、本当に僕の話ていることを理解してくれているのだろうか。酔っているとはいえ、勘弁してもらいたい。
「悪いな。マジで急いでるんだよ。お前の家にはちょっといけそうにない」
真壁のため息がきこえた。
そしてほんの数秒の沈黙をおいてから、見つけたぜ、という一言が帰ってきた。
有料駐車場にたどり着いた僕は、車のドアをあけた。助手席に紙袋を乗せる。
「なにを見つけたんだよ」
キーをさしこんでエンジンをかける。エアコンをつけて、ドアをしめた。
「ったく。見つけたって言ったらひとつしかないだろ。今日一日、小屋の中を荒らしまくってようやく発見したんだからな」
と真壁は遠回しに言った。
その言葉の意味にようやく気がついた僕は、携帯を耳にあてたまま動きを止めた。
「まさか」
歓喜が腹の底から沸々と沸き上がってくるのを感じていると、ふふん、と真壁が笑う気配がした。
「お前が欲しがってた本。俺からのクリスマスプレゼントだ。早くとりにこいよ」


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