決意のマーマレードを抱いて-3
長老の話では、この世にいる光の魔法使いはごくわずかだという。
長老さえも会った事がないらしい。
僕がもし、そいつを見つけられなかったらどうすれば良いのだろう。
その時は…。
とにかく一刻も早く光の魔法使いを見つけ村に帰らねば。
一年以内に呪いを解かねばサラは死んでしまうか、あるいは…悪魔になってしまう。
アイツが死ぬなんて考えたくもないが、悪魔になった姿を見るのもいやだ。
もう一度、今までと同じ、笑顔の綺麗なサラに会いたい。
もう一度、しっかり抱き合いたい。
ふと、気がつけばここはいつもの山の中だ。
不思議だ。たった一人でこの道を歩くのは。
何度も通った道なのに、まるで初めてであるかのような感覚。
今日は木の実がたくさん生っている。
アイツがいたら満面の笑みで喜びを表現するだろうに。
今になって僕の中に寂しさが溢れてきた。
そして孤独感。
何やってるんだろう、僕は。
アイツのいない旅なんて、とてもじゃないが無理だ。
村を出て約4時間が経過し、自分らしくもない不貞腐れた根性が心の隅に巣喰った。
サラがいなくては何も出来ない自分に自信も、目的さえも失いかけたその時、僕は何かの気配を感じた。
何かが近づいてくる。
ザザッという草を踏む音が、確かにあった。
背筋にひとつ、冷や汗が伝った。
「な、なんだよ。動物…か?」
体が強張り、首だけ振って辺りを見回すが、何も見えない。
そろそろこの山路は薄暗くなってきている。
気にしないようにして再び歩き出すが、気配はまったく消える様子がない。それどころかじわじわと近づいてくる。
「なんだ? なんだ? 一体何なんだ!」
ついに半狂乱になって叫んだところ、強い風が木と木の間を抜けていった。
一瞬、静けさに包まれるが、次の瞬間には視界を何かに遮られた。