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甘酸っぱいストロベリージャムとともに
【ファンタジー その他小説】

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決意のマーマレードを抱いて-4

「どこに行くのかな、ボウヤ」

「あんた、何者だ?」

「さあ」

相手の姿が見えた事で、なんとか僕は冷静さを取り戻した。それでも恐怖が少しずつ振り返してきた。

「人間…じゃないな」

「御名答。私は魔族さ。おっと、見るのは初めてかな?」

そいつは男の顔で妙に背が高い。黒っぽい衣服を身に纏っているので、遠くからだと普通の人間に見える。

が、しかしキバがある。こいつは…

「あんた、ヴァンパイアだな」

「ほう。これは賢いボウヤだ。キミのような奴を'生け贄'として差し出せば、ギール様もさぞ喜ばれるだろう」

「ギール? どこかで…」

「おや、ギール様については知らないのかい」

そいつは高い鼻をフンと鳴らして続けた。

「我々が崇拝する偉大な邪神さ」

「今…なんと言った?」

「ギール様とは我らの邪神だと言ったのだ」

まずい、こいつは…やばい。

「おっと逃げちゃダメだよ。キミは私と出会ったんだから」

じりじりと間合いを詰めて来る。このままではきっと殺される。

咄嗟にポケットに手をつっこむが、あるのは財布だけだった。背中のリュックにもロクな物はない。

終わった。

「ちくしょう。あの役立たずエロじいめ」

「何をボソボソ言っているのだ? 悪いがボウヤには死んで貰うよ」

その差2メートル。そいつがキバを剥き出しにして迫ってくる。

もうこれまでかと諦めかけた時、地面に丁度良い大きさの石ころを見つけた。

「くっ、これでも喰らえ!」

渾身の力を込めてそれを投げた。その憎たらしい顔に向かって。

ど真ん中ストライクだ。

『…ピン』

いや、違う。ヤツは…何をした?

「やだなあ、ボウヤ。私は飽くまでも魔族だよ。石ころごとき指先ひとつで十分さ」

今、僕の視界の中で起きた事。石が、ヤツの眼前で粉になった。文字通りの粉々だ。

唖然としている僕は一気に近づいてきたヴァンパイアに首を掴まれた。

そいつの手は冷たい。本当に氷のようだ。


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