回春-2
「ああ、いいね…若い頃を思い出す…」
セックスの快感を覚え始めた頃を思い出しているかのような、心の中のわたしの一人遊びが伝わったのでしょうか。お相手も若い頃を思い出されたようです。お相手が(シたいときにヤレる…そんな相手が欲しかったんです)とおっしゃっていたのを思い出しました。心の中で同意しているわたしにかわって、『シたいときにヤレる』よろこびを、わたしの秘部が音を立てて応えています。
(ぐっぷ…ぐっぷ…ぐぷっ…)
「ああ…たまらん…もう…出すぞっ…」
(じゅっぷ…じゅっぷ…じゅっぷ…じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ…)
わたしの中で果てようとお相手が腰の動きを極限まではやめています。
(ぐぼぐぼぐぼぐぼぐぼぐぼ…)
わたしも激しく中を抉られる快感と、射精に至るお相手の切迫感に合わせてアクメが近づきます。わたしの腰を掴むお相手の手に力が籠り、突き込む勢いも増してきました。
「あっ…あっ…あっ…いく…いく…いく…いく!」
いつもはこんなことは言わないのに、はしたなくアクメを告げてしまうわたし。お相手も最後に深く一突きしてわたしの中で果てました。
「いやその…いつになく…すみませんね」
身体を離してお相手が、股間から垂れ落ちるぬめりが衣服に着かないようにティッシュで拭っているわたしに声を掛けます。『いつになく』興奮して事に及んだことなのか、『いつになく』多い体液を放ったことなのか…。きっと両方なのでしょう。
「いえ…そんな」
そう言いながら、白い体液をまとった肉棒をお口で綺麗にしていきます。
(オジサマの精液とわたしの愛液が混じり合って…美味しいです…オジサマ…)
いまさらながら服を脱いで裸になる二人。ようやく布団の上に移って抱き合います。
「準備運動にしては、力が入り過ぎましたね」
わたしの背中や腰をさすりながらお相手が照れています。
「いえ…とても素敵でした」
そう応えたわたしに、お相手はキスしてくださいました。
(二人の体液で匂うでしょ…それでもいつもキスしてくれてうれしいです…オジサマ…)
「ホテルに行く金もなかった若い頃をつい思い出しましたよ…」
「松林の中で…」
学生時代にはいつもそうして同級生と…と前に伺ったお話。
「覚えてましたか…恥ずかしいですね…。でも、貴女の雰囲気があの頃のことを思い出させてくれるものだから…次は歳相応に落ち着いてシましょうね…」
お相手が身体を重ねてきます。
(ぐぽっ…)
『あの頃の彼女』には似ても似つかないはしたない音…。恥ずかしさがこみ上げます。歳相応ではあるのでしょうが…。
「ヤだ…恥ずかしい」
思わず呟いてしまうわたし。
「いいじゃないか。ヤりたかったんだろ?」
とりあえずお相手は、わたしが恥じらう若い女を気取っていると思ってくれたようです。
「気持ちいい?」
わたしは意を決して若い女を気取ることにしました。
「うん…気持ちいいよ」
「逢えないとき、どうしてた?」
「ヤだ…恥ずかしい…」
「教えてよ…教えないと抜いちゃうよ…」
「…オナニー」
「スケベ…」
お相手が突き込み始めます。
「あん!…やん!…やん!…あん!…あん!…」
「自分の指よりこっちの方が…いいだろ?」
「いい…いいよ…あん!…ああん!」
「なにがいいの?…言ってみて?」
「あん!…あん!…ち…ち〇ぽ…ち〇ぽぉ…!」
二人合わせてゆうに百歳は超えるというのに、その日は六時間も滞在してしまいました。フロントに二回延長コールをしましたから…。
帰り際、お弁当をまだ食べていないことに気付いて、ふたりで顔を見合わせて笑ってしまいました。結局、ホテルを出てから公園のベンチで食べました。
「こんなにたっぷり愉しんだのに、なんだかまだムラついてますよ」
お相手が苦笑を浮かべています。翌日も同じ時間に逢うことを約束して別れました。
家に帰ると夫が先に帰っていました。ほろ酔い加減の夫は機嫌がよさそうです。
「おそくなってごめんなさい。〇〇さん、お元気でした?」
「ああ。なんだか奥さんとうまくいってないとかボヤいてたけどな。お前の方は楽しかったか?」
「ええ、おかげさまで。気持ちが若返って楽しかったわ」
「何食べたんだ? 顔がえらくつやつやしてるな」
今日の密会の効果がもう現れているのかと、ちょっと焦ってしまいます。
「ええっと…美味しいお肉、いただいてきました…あ、明日はお夕飯は?」
「明日は普段どおりだナ…」
わたしの虫のいい思惑は呆気なく外れてしまいました。
(美味しいお肉をいただいたのは嘘ではないけど…いただいたのは下のお口よね…)
心の中でもう一人のわたしがいたずらっぽく笑っています。
(あら…上のお口でいただいたお肉も美味しかったじゃないの…食感といい、ドレッシングの風味といい…)
「眠くなった。寝る。お前も寝ろよ」
夫の声に我に返りました。明日に備えて早く休んで体調を整えます。