睦夫との別れー4-2
果てた奈岐は、今度は睦夫のおちんちんへのお清めはしなかった。しばしの後、スッと立ち上がり、洗面に向かいシャワーを浴びた。全てを洗い流した。もう二度と睦夫の体液が奈岐の身体に付くことはないのだった。
ドライヤーで髪を乾かし簡単にセットし、服を着た。そしていよいよお別れだった。普段の姿の奈岐がベッドの前にあらわれると、既にベッドに腰かけていた睦夫は、
「奈岐ちゃん、こんなことして申し訳ないとも思うけれど、君に何かしてあげたい、と思って考え続けてきた。でもいい案がなくて、、、、
でも受け取ってほしい、そして誤解しないでほしい、後ろめたいことが有ってするんじゃない、君を愛した記念に受け取ってほしいだけなんだ。わかってほしい、、、、、、、
そして、君に見返りを求めているのでもない、そんなことは期待していないし、君にしてほしくもない」
奈岐は手にかなりの厚さの小さな紙袋を手渡された。睦夫の言わんとすることは理解できた。そして、紙袋の中身を見ると、一万円札が二束入っていた。
「こんなこと、、、、、」
と奈岐がつぶやくと、
「いや、僕の感謝の気持ちなんだ、失礼かもしれないけど、、、、、、、精一杯を現わそうと考えてそうさせてもらった。本当に誤解しないで受け取ってほしい、本当に何も見返りは求めていない」
睦夫が真摯な目で奈岐を見つめていた。その目に嘘は無かった。
「睦夫さん、わかったわ、睦夫さんの気持ちを受け取ることにする」
睦夫の会社は、曲がりなりにも優良中小企業だった。その常務が出した二百万円だった。奈岐にはよくわからなかったが、自分がお金で買われたとは思わなかった。お金で買われていてあんなに愛情深く愛してくれることが有るとは思わなかった。それに奈岐はその種のことを睦夫に言ったことはなかった。別れてほしいとだけ言った。この逢瀬を奈岐も十分に楽しんだ。睦夫の愛を信じていた。
奈岐は、睦夫の言葉を素直に受け取った。これでいいのだろう。二百万円の現金を持って家に帰ることは憚られた。ホテルのATMに行き口座へ入金にしてからタクシーに乗り、家に帰った。時計は10時だった。