ウレシナミダ-4
「やっぱりキスは口にだろ」
口をパクパクさせている私を見てラディは笑った。
私を抱き上げるとそのまま外に向かって歩き出した。
「…俺は今の自分の名前が嫌いじゃない」
「えっ?」
「前にアリィに言っただろう?自分の名前が嫌いだと」
「あ、ああ」
「今は嫌いじゃない。この名のおかげでアリィをあの馬鹿兄貴から奪えたし、結婚式も阻止できた。それに、アリィがこの名を呼んでくれるから」
ラディは温かい笑みを私に向ける。
「それと、先にアリィを見初めたのは俺だ」
「えっ?どっかであったことあったか?」
「一度、幼い頃、城で謳わなかったか?」
そういえば前に一度だけ、城の舞踏会か何かに呼ばれたことがある。
私はコクリと頷いた。
「…その時からずっと探してたんだよ。アリィ、あの時の歌姫を」
ラディははにかんだような笑みを見せた。
私は彼の頬にキスを送った。
「ラディ。ありがとう…。大好き」
私の精一杯の言葉。
「アリィ。これからもずっと愛してる…」
ラディも少し恥ずかしそうに言った。
教会の外に集まった人の中を抜ける。
拍手と祝福の言葉、愛しい人がここにいる。
涙が頬を伝った。