甘い同棲生活@-6
「ねえ、加奈子」
「なぁに」
「ちゅーも、久しぶり。もっと、したい」
加奈子のふふっ、という笑い声が聞こえたかと思うと。
ついばむような、ちゅっという一瞬の音。
「終わり。もう寝なきゃだーめ。ほら、うるさいと木綿子ちゃん起きちゃうから」
「ん……。物足りない」
「わがまま言わないの」
加奈子は制止するような言葉を言ったくせにーー「最後だよ」と言った。
はぁ、という吐息が、木綿子の後ろから聞こえたかと思うと、何とも情熱的なキスをしている気配が背後に感じられた。
唇の密着する音、二人の吐息の漏れる音。
先程の、水の口移しもそうだが、清潔感溢れる加奈子が自ら、唇を重ねているという状況が信じられなかった。
きゅぅうん、と木綿子の子宮が思わず疼く。
そのとき、二人はようやく唇を離したらしい。
「か、加奈子の舌……やば……い。うぅ……」
「ふふ、ほら。我慢できなくなるから、だめって言ったのに」
何人もの女性とベッドを共にした理央が、我慢ができなくなるほどの加奈子の舌技とはどんなものなのか。
木綿子は二人の声のやりとりと、衣擦れと、二人の体が密着しあう音でしか判断できないから、余計に情欲が掻き立てられる。
「寝ましょう」
布団を、ぽんぽん、と叩く音がする。
子供を宥める母親のような一面と、清潔感溢れる様子からは想像すらできない、妖艶な一面とーー
そんな加奈子を、木綿子は覗き見してしまった気持ちになり、すぐには寝付くことができなかった。
*
「んん……」
それでもなかなか、酒に酔った状態には適わなかったらしい。寝ついてからは一度も目を覚ますことはなかった。
薄ら薄ら目を開けると加奈子がこちらを向いて眠っていた。
そのとき、加奈子もゆっくりと目を開ける。
「木綿子ちゃん、おはよう。寝られた……?結構酔ってたけど、具合大丈夫かな。まだ寝てていいから」
寝起きの少し低い声。
情欲を掻き立てられるような、昨夜の理央と加奈子とのやりとりを思い出して、寝起きなのにもかかわらず、木綿子は顔を熱くさせてしまった。
その回想をかき消したのは、二階からの足音。
ふすまが開いて、入ってきたのは柚木だった。
「佐藤くんもここで寝てたのっ」
「早起きなのはいいことだけど、まだ静かにしてなさい。佐藤くん、きっと二日酔いだから」
半ば起き上がりながら、気だるそうに言う。
長い髪の毛をかきあげて、布団に再び入り込もうとしたときに、ちらりと木綿子に向けた視線に、どきん、と胸が高鳴る。
「ん。木綿子ちゃん、どうかした?」
じっと加奈子を見つめていたことに気づかれる。
「あ、いや………」
今の表情と、昨日の情事がリンクした、とはもちろん言えない。
口をもごもごさせていると、枕の側から、木綿子と加奈子の間に柚木が入り込んできた。