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義娘のつぼみ -背徳の誘い-
【ロリ 官能小説】

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突然の悲劇-2

        2

 武司は車で茉由の中学校に立ち寄った。教職員に事情を話して娘を車にを乗せると、雨の降る中を妻の搬送された救急病院へ向かった。

 助手席の茉由は俯き、終始無言だった。母親のことが心配でならないのだ。

「きっと大丈夫だ。お母さんが死んだりするものか」

 娘に声を掛ける武司。だが、それが気休めに過ぎないことは、彼自身が一番よく知っていた。

 武司は勤め先の会社で、病院からの連絡を受けた。打ちどころの悪かった理恵は、病院に搬送された時点で容態が芳しくなかったという。そのため担当医からは、最悪の事態も覚悟しておいて欲しいと告げられていた。

「絶対? ママ、死んだりしない?」

 茉由はボロボロと涙を流しながら訴えかける。武司はその顔を直視するのが辛かった。

 彼は一刻も早く、妻の元へ駆けつけたかった。だが、外は大雨だ。見通しも悪い。無理には車を飛ばせない。自分も事故を起こして、茉由にまで大怪我を負わせるわけにはいかない。彼は焦れる気持ちを抑え、車を病院へ向かわせた。


 車は夕方の混雑した国道を慎重に走り、ようやく父娘は母親の元へ到着した。二人は手術室へ案内され、近くの待合スペースのベンチに腰を落ち着かせた。

 外来診療の受付時間が過ぎているせいか、大きな病院の建物の中は人気(ひとけ)がなく、ガランとしていた。

 茉由は手術室の扉を凝視している。両手は膝の上で、制服のスカートの裾を固く握りしめていた。(ママが無事でありますように)そんな、念を送り続けているようだった。

 武司は時おりやってくる看護師や、職員の相手で忙しかった。

「こんな時に申し訳ございません」

 と言いながら、保険証の提示や、書類への記入を次々に要求してくる。

(なんて無神経な)と、武司は文句のひとつも言ってやりたかったが、彼らとてそれが仕事なのだ。無下にはできない。今はただ、ここの医師に頼るしかないのだ。

 一時間ほどが経過したが、扉の上に設置された『手術中』の赤いランプは、未だに点灯したままだ。

 気を利かせた年配の女性看護師が、入院患者用の病室の空き部屋を一室用意するので、そこで休むよう提案してくれたが、茉由が頑としてその場を離れようとしないため、丁重に辞退することにした。

 武司と茉由はベンチに座って、手術が無事に終えることを願いながら、ただひたすらに待ち続けた。


 どれだけの時間が過ぎただろうか。
 病院内はあちらこちらが消灯され、薄暗くなっていた。武司と茉由二人のいる待合スペースと、手術室前の通路のみが、照明に照らされていた。

 茉由もさすがに疲れたのだろう、武司の肩にもたれかかって眠っている。周囲は物音ひとつせず、彼女の寝息だけが微かに聞こえていた。

 武司も疲労が限界に達していたが、目だけは冴えていた。とても居眠りが出来る心境ではなかった。彼はもたれかかる娘の肩を支えながら、ゆっくりと彼女の身体を横たえ、自分の膝にその頭を載せた。

「――ママ」

 茉由の口から声が漏れる。起こしてしまったかと武司は思ったが、彼女は熟睡したままだ。寝言だった。武司はそっと娘の髪を撫でる。

(大丈夫。茉由のママはきっと助かる)


 武司がウトウトし始めたころ、ようやく『手術中』のランプが消えた。壁の時計は夜八時を回っていた。

 手術室の扉が開き、中から薄いブルーの手術衣と手術帽子を身に着けた、三十代半ばくらいの医師が姿を現した。

 武司は茉由の肩を揺すって起こした。
 医師は沈鬱な面持ちで、父娘の元へ歩み寄ると、

「設楽理恵さんの、ご家族ですね?」

 重い口を開いた。

「はい。あの、妻は……」

 武司の声は震えていた。

「――最善は尽くしたのですが、残念です」

 医師は首を左右に振ると、そう答えた。

「わああああっ」

 直後、茉由が泣き崩れた。武司はその肩を抱き、彼女をなだめることしか出来ないでいた。


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