憧れの家族-2
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しばらくして、武司と理恵は入籍して一緒に暮らし始めた。
二人とも派手なことを好まないため、合意のもと、式や披露宴などは行わなかった。ただ思い出づくりとして、貸衣装を着ての結婚写真の撮影のみに留めた。
理恵の実家の両親も、武司の人柄を気に入ってくれたこともあり、なんの障害もなく、親子三人は新生活を始めることができた。
名字は夫婦で話し合った結果、もうじき中学生になる娘の茉由のことを考慮して、当面は別姓を名乗ることにした。
住居についても、なるべく茉由の生活環境を変えないようにするため、武司はそれまで住んでいた賃貸マンションを引き払い、理恵のマンションに越してきた。元々が三〜四人家族用の間取りだったこともあり、広さに全く支障はなかった。
武司が理恵母娘(おやこ)と一緒に暮らすようになって一か月ほどが過ぎた。
「いってきます」
その日の朝、紺色の真新しいセーラー服を着た茉由は、朝食もほどほどに、ボソっと食卓にそう言い残して玄関へ向かった。
「いってらっしゃい」
武司は努めて明るく声を掛けるが、茉由は振り向くこともせずに家を出た。
「もう、そろそろ慣れてくれてもいいのに。本当は明るい娘なんだけど……」
理恵がボヤくと、
「いいんです。それだけ前のお父さんに酷い目に遭わされたんでしょう」
すぐさま武司は茉由を庇う。
「……ああ、ごめんなさい、一時(いっとき)でも理恵さんが愛した男(ひと)を悪く言ってしまって」
「ううん、いいの。実際にどうしようもない、酷い男(やつ)だったから」
食卓に頬杖をついて答える理恵。その表情は穏やかで、幸せそうだった。
彼女は武司に出会ったことで、いやな過去も笑って語れるくらいに、傷ついた心を癒やされていた。
「――それで茉由ちゃんのことですが、こういうのって慌てない方がいいと思うんです。ゆっくり時間を掛ければ、彼女も心を開いてくれると思います」
武司は毅然とした面持ちで言う。彼は仕事で困難に直面した時のような、やり甲斐を覚えていた。
「それも大事なんだけどね……」
理恵は甘えるような口調に変わる。
「敬語と、それからさん付け、そろそろやめにしない? 私たち、夫婦でしょ?」
武司は自分が理恵より年下のせいか、彼女への名前の呼び方と話し方をなかなか改められずにいた。
「――うーん、それも時間を掛けて徐々に、ってことでいいですか?」
はにかんだように、彼は答えると、
「それじゃあ、宿題ね」
理恵はそう言いながら、食卓を回って武司の隣に座る。
「……ねえ、出勤まではまだだいぶ時間があるでしょ?」
武司の耳元で囁くように続ける理恵。
「はあ、かなり余裕はありますけど」
時間はまだ朝の八時前。武司が出勤で家を出るまではまだ一時間近くある。共働きの理恵も同様、彼女も家を出るにはまだだいぶ時間があった。
武司は茉由とのコミュニケーションの時間をなるべく多く取るため、彼女の登校時間に合わせて朝食を摂るように早起きしていた。まだ服も着替えておらず、寝巻き用のスウェット上下のままだ。
「ねえ……しよ?」
理恵の手が、そっと武司の股間に伸びる。彼の分身はすでに屹立していた。
「いいんですか? こんな朝から」
言いながら、武司は理恵の細い肩を抱き寄せる。
「だって、夜は出来ないでしょ?」
茉由が家にいる時間は、自宅での夫婦の夜の営みはしづらい。
結婚して同居するようになっても、二人は時おりラブホテルで互いを求めていた。
「ん……」
どちらからともなく、二人は唇を重ね、貪るように吸い合う。
武司の手が、部屋着とエプロン越しに理恵の胸を鷲掴みにし、柔らかな膨らみを激しく揉みしだく。彼女の口から、堪らずに喘ぎが溢れた。
もう片方の手でスカートをたくし上げ、太腿から尻、腰を指先でなぞり、刺激する。やがてほんのりと汗ばむ理恵。生ぬるく、そして甘ったるい彼女の体臭が漂い、武司の鼻孔を突いた。
愛撫に身悶えながら、理恵は両手を武司の背中に回し、彼のスウェットの裾を掴んで持ち上げる。下に着たTシャツごと捲りあげて脱がすと、筋肉質の上半身が露わになった。
武司も理恵のエプロンと部屋着のロングTシャツを脱がす。飾り気のない、ベージュのブラジャーが現れた。
二人は唇を合わせながら手早く下の着衣も脱ぎ捨てる。お互い下着のみの姿となった。抱き合いながら、食卓の椅子からリビングに移動する。
理恵をソファーに横たえると、武司は彼女のブラジャーを外し、その膨らみの頂上に吸い付いた。先端の突起を口に含み、舌で転がし、舐(ねぶ)り、顔全体を押し付けて、Eカップの乳房を存分に味わった。彼女の呻くような息遣いが、徐々に激しさを増す。
武司は舌先での愛撫を、彼女の下半身へ移動させる。腹から臍(へそ)へ、そして更にその下へ。紫色のパンティーが目に入る。彼は理恵の膝元から内腿に向けて、掌で撫で上げる。理恵は無意識に内腿に力が入り閉じかけるが、武司の手は意に介することなく彼女の股間を覆う布地を探り当てた。指先が秘部をなぞると、ほんのりと湿り気を感じる。
「ん、んふっ」理恵の口が、短い嬌声を漏らした。
武司は彼女の腰に両手をやり、パンティーの裾を持って引き下げる。理恵は脱がしやすいように腰を浮かせた。
理恵が身に着けた最後の一枚を剥ぎ取ると、目前に彼女の秘部が露わになった。
ふっくらと肉付きのいい下腹部には、手入れの行き届いた恥毛が、程よく茂っている。その下には亀裂が走り、その間からはやや黒ずんだサーモンピンクの花弁が顔を覗かせていた。