厄介なアイツ-4
（……なんでオマエが……!?）
最後尾の車両に乗り込んでいた高橋は、思わず外に身体を向けて顔を見られないようにした。
そしてチラチラと横目を流し、その人物を観察する。
薄汚いチェック柄のYシャツにジーンズを着た桜庭が、人垣を擦り抜けて移動している。
自分に断られ、たぶん佐藤も駄目だろうと思って、それで一人で行動を始めたのだろう。
その動きは痴漢のターゲットを選ぶ為のものに違いなく、それはつまり、自分達の選んだ《食材》に唾を吐ける行為になり得るものだ。
｛桜庭がこの電車に乗っている｝
自分達の存在に気づけば、以前のように馴れ馴れしく近づいてくるのは明白だ。
『一緒に痴漢しよう』とまた誘ってくるだろうし、もしかしたら『強姦仲間に入りたい』と鈴木に泣きつくかもしれない。
何もかもが迷惑な話しだ。
断固として拒否する。
高橋が鈴木にLINEを送ると、直ぐに一斉送信で指示が送られてきた。
｛アイツは女しか視てない。外向いてやり過ごせ。あと次の駅で降りろ｝
桜庭がこの電車に乗っていた理由は簡単である。
この時刻に走る電車に一番多くの〈メス〉が乗るからだ。
これより一本前でも後ろでも、かなりの数が減ってしまう。
それを知っているから、痴漢師として復活した桜庭は〝乗った〟のだ。
｛次は〇〇駅。降り口は右側です｝
男共は電車から降りた。
川上愛や森口涼花、もしくは斉藤美桜や浅井唯を凌駕する極上の獲物が乗っていたかもしれない電車を、指を咥えて見送る屈辱……。
そんな可能性に溢れる電車から〝降りる〟というのは、事実上の敗北であった。
『やってくれたよなあ……』
『眠い目を擦って早起きした努力を無駄にさせやがって。あのクソが……』
失意のままで合流した男共は、弘恵に慰めてもらうべく走らせる車内で、口々に思いを吐き出していた。
［痴漢許すまじ］
無自覚なままに男共の仕事の邪魔をした桜庭は、今ごろ可愛らしい女子高生や女子中学生を触りまくっているのだろう。
なんとなれば自身のファスナーを開けて短小チンポを引っ張り出し、必死の自慰で生意気そうなＯＬの尻に射精までしているかもしれない……。
『弘恵ちゃん、ただいまぁ〜』
『昨日喰った晩飯がクソになってケツに溜まってんだろ？浣腸してやるからケツ見せろぉ』
「も"があ"ッ!?がも"…お"ぶッ！」
ボールギャグと唇の間から、弘恵は涎を噴き出して呻いている。
被虐の快楽に目覚めていたならこの責めも悦びだろうが、その様子では〝違う〟ようだ。
「ん"も"ーーーーーーッ！」
セーラー服を被せた《クソ袋》が、その中身をブチ撒けた。
出口であり入り口でもある穴はポカンと開き、いつものように抱かれるのを待っている。
鈴木は蔑んだ目で弘恵を見ながら、しかし、完全に勃起した男根を握り、ますます貧相になっている尻を抱えて肛門に突き刺した。
弘恵の温もりが先端部を飲み込み、そしてズブズブと根元まで包み込んでくる。
骨盤が疼き、背筋が痺れ、脳天が弾ける。
そこには離れ難い快楽が、確かにあった。