親友の恋人への愛撫-7
「しご、と……できなく、なっ……ちゃ……から……、も、お願い」
甘美な吐息を吐き出しながら、隼人の耳元で懇願する。
隼人のスラックスの中の、下着に包まれたペニスはどろどろと先走りを流して、目の前のこの女を犯してしまいたかった。
指を入れたまま、加奈子の息が整うのを待って、隼人も左手で加奈子の体を抱きしめた。
「中村さん、ナカ、こんなにして……俺と……したく……ない?最後まで、したいの俺だけですか」
もし二人して理央を裏切るというのなら。
このひと時の快感に身を任せてしまいたかった。
少なくとも隼人はそう思っていた。
「俺、中村さんにヤキモチ、妬いてました。いつもなら女の人、二人で共有してたのにって。でも今なら、理央がさせたくない理由がわかります。本当に……いやらしい。ーー中村さんと、繋がりたい」
佳織に言うような弱音を吐く。
この女のナカに入ってしまったら、どんな快感が得られるのだろうか。
あれほどまで色んな女と寝てきた理央がパートナーとして認めた女なのだ。
「ーー嫌。最後までしないって約束だったでしょう?」
はっきりそう言われて、隼人はうろたえる。
加奈子は隼人の手をストッキングから引き抜くと、ジャケットの内ポケットからハンカチを取り出して、加奈子の体液で濡れた指を拭ってやった。
「認める。武島くんに……触られて、気持ちよくなってしまったこと。
でも、ーーこんなに気持ちが昂って、考えてるのは佐藤くんのことなの。武島くんがあたしのことこんなにしたせいで、佐藤くんのことばっかり考えてる」
加奈子は切なそうな隼人の顔を見て、髪の毛を撫でる。
「あたしがいやらしく見えるんだとしたら、佐藤くんのこと考えてるから。今日、外回りでいないのに。仕事できなくなるでしょ」
愛撫の途中で彼女が言った仕事ができなくなる、とはそう言う意味だったのかと、隼人は唇を噛む。
ハンカチの体液で汚れた側を内側にして加奈子はジャケットの内ポケットにしまって、スカートを直すと立ち上がった。
立ち上がった加奈子に対して、隼人は手を引っ張る。
「ーー武島くんに、佐藤くんのこと裏切って欲しくないのはもちろんだけど。佐藤くんのこと考えながら武島くんと繋がるなんて、失礼なことしたくないよ」
加奈子は困った顔で、隼人を見た。
どちらも欲しいと言った、佳織とは違う。
どこまでも自分の親友と、自分を思いやるその態度に、隼人は胸が苦しくなる。隼人はそのまま加奈子の腕を引っ張り、加奈子の胸の辺りに顔を押し付けて抱きしめた。
「謝っても……どうしようもないことなんですけど、すみません…」
「女の子が、全員させてくれると思ったら大間違いですよ、武島くん。あたしの気持ち、考えて頂戴。もし、佐藤くん以外の男性とするにしたって、きちんとその男性と向き合いたいの。流されたくないよ」
「すみません……先に……下、戻って貰えますか?ちょっと、落ち着かせないと、まずいので」
抱きしめたまま、情けなさそうに隼人は言う。
性欲が強いからこそ抑えてきたし、かつ会社でそういう発言をしているからこそ、それがある種のカリスマ性として周りに捉えられていたのかもしれない。
そしてそうした扱いをされることによって、自分はどんな女でも抱けると過信していた部分は往々にしてある。
加奈子の言葉には、そんな意味まで込められているだろうことが分かって、隼人は情けなくなった。
「うん。武島くんの資料も持ってっとくね」
そんな隼人に対して、加奈子は何事もなかったかのように返事した。