THE BLACK BOX-12
「ん?ちょっと待って?じゃあBLACK BOXは今、保管庫にあるって事なんじゃないの?私、見たし。」
そう言うと彩香は持参した書類を出した。
「上原さんが見たのはこれですよね?」
「そう!これこれ!じゃあやっぱBLACK BOXはここにあんじゃん!」
「上原さん、これはファイルであって箱ではありません。」
「どゆ事?」
「その名の通りです。BLACK BOXとは箱。黒い箱なんです。その中に極秘資料が入ってるんです。上原さんが見たコレはコピーです。ほら、認印が白黒じゃないですか。」
「あ、そっか…」
「しかもBLACK BOXの中に入ってる資料のうちのほんの一部に過ぎません。調べでは何千件ものグレーな事案が書かれてると。それにほら、こうして私が取り出せるんですよ?いくら保管庫へのアクセス権限貰ってても、そう簡単に持ち出せる訳がないじゃないですか?これは何者かが上原さんに三億円事件の真相を知らせる為に置かれたものだと思います。上原さんを三億円事件に取り込む為の。」
「はーっ!?私はまんまと利用された挙句命を狙われたのー!?最悪じゃん!!」
「今の所、田口によって狙われた加藤総監、飛行機テロの犠牲になった杉山総監と、そして今回の上原さん、立て続けに警視総監が命を狙われてます。これは偶然ではないと思います。」
「確かに…。」
「BLACK BOXが今警察の手元にあると思われいる以上、きっと今後も上原さんが狙われる可能性は高いと思います。ですからまだ黒幕と決まった訳ではないですが、高嶋謙也の動きに注意しなければなりません。今後もBLACK BOXを手に入れようと色んな手を使って来るでしょうから。」
「でもその方が尻尾をつかむチャンスが増えるって事。なりましょうじゃないですかー、囮に。絶対足を掴んでやるし!」
危険を顧みず、むしろそれをチャンスと捉えるメンタルは凄いと思った彩香。
「今、警察が上原さんを失ったら足元からガタガタと崩れてしまいます。ですからあまりご自身で動かない方が…」
「ヤダ。無理!」
即答する若菜に、絶対そう言うと思った彩香は苦笑いする。
「ですよね。だから絶対1人では動かないで下さいね?あと防弾チョッキは必ずつけて下さい。」
「防弾チョッキは嫌。だってオッパイがキツいしセクシーさが損なわれるもん。」
「そ、そんな事言ってる場合じゃないでしょう…?」
「嫌なものは嫌っ。」
「ダメです。つけて下さい。」
「ヤダ。」
この後押し問答がしばらく続くのであった。