悲壮-1
金曜夜、啓介はシフトに入っていた麻由と閉店の準備をしていた。
以来、麻由は最終のシフトに入れることが多い。
最終シフトは客も少なくバイトは一人なので、つまりは麻由と二人きりの時間だ。
片付けが一段落着いた。
「、、、いよいよ明日だけど車で行くから乗せていこうか?」
前回は交通機関を使ったが、またショックで放心したら人と接したくなくなる。
それを見越して車で行くことにした。
「ありがとうございます。電車、苦手だから」
色々と「苦手」は多いようだ。
「その、明日のことなんだけど・・・」
麻由が改まって啓介のほうに向き直した。
「なんでも、、、相手の数が増えたらしくて」
昨日入った連絡では前回の六人のうち一人が都合がどうしてもつかないらしく、そして新たに二人追加となったらしい。
これ以上「新規」を増やすのは、啓介にとっては喜ばしいことではない。
「、、、わかりました」
無表情で、簡潔に了解の旨を啓介に伝える。その様子が啓介には却って心配であった。
「、、、どうかしました?」
麻由のほうは麻由のほうで、そんな啓介を気遣う。
「そんなに心配しないでください。新しい人だろうと何回目だろうと一緒です。されることは同じなんだから」
されること、、か。
いちいち麻由の言葉に動揺する自分が情けない、、、啓介は自虐した。
そして迎えた当日。
彼女は待ち合わせに、五分ほど遅れてやってきた。
ノースリーブの白のサマーニットに淡いピンクの膝丈のスカート、、、今日も目を奪われるほどの美貌だ。
車で約1時間ほどをかけて、前回とは別のホテルの駐車場へと到着した。
「なんだか、、、元気ないですね。今日もオーナーは私を抱くんですか?」
随分とあからさまの質問をするものだ。
「構わないの?」
啓介は冗談半分で尋ねてみるが、
「いやです、、、人前では」
と、麻由は照れたように言う。これも啓介を気遣ってのことであろう。
了解されたとしても、確かに人前でまた麻由を抱くことなど・・・できないだろう。
というより、もはや麻由のカラダをを他の男に見せたくない、という気持ちが、啓介のなかで刻を追う毎に強くなっていく。
しかし、、、あと数分後には麻由は犯されてしまう。
元気など、あるはずもなかった。