消えた西進不動産-10
するとそこへ華英を心配した両親が来て対面する。娘を心配する両親を若菜は微笑みながら見つめていた。そして両親から挨拶、感謝、華英がいかに若菜を信頼し尊敬をしているかと言う言葉を貰い恐縮する。若菜はいかに華英が両親から愛されているかが分かっただけでも嬉しかった。
そして次に現れたのは若菜の家族だ。
「若菜ちゃん、無事で良かったぁ…」
泣きそうな顔で静香を抱えた亜希子が歩み寄る。
「すみません、心配かけて、お義母さん。」
「ホントよー、もぅ…」
涙を拭う亜希子に対して事の重大さをまだ理解できない静香は、ただ単純にママに会えた事に喜ぶ。
「ママー♪」
「あー静香ぁ♪」
静香を譲り受け抱きしめる。
「ママ、どうしたの?髪の毛チリチリー」
「ん?あ、ああ、ちょっと燃えちゃったのよねー。」
「チリチリー」
「アハっ、チリチリね。」
静香を抱き、ナチュラルな笑みを見せる。
「お姉ちゃん、大丈夫??」
後ろから太一が現れた。
「うん、平気平気。ごめんねー、心配かけて。」
「うん。」
言葉は少ないが年齢的に18歳程離れた太一は息子のようなものだ。生まれた時からよく面倒を見ていた。口にはしないが太一も静香のように抱っこされたい気分だった。口数は少ないが太一が自分を思ってくれる気持ちは十分理解していた。
(それに比べてあいつわぁ…!)
若菜は華英の方に視線を向ける。さっきから騒がしいく鬱陶しく感じていたのは華英を心配し真っ先に華英に向かって行った華だった。
「良かったー、華英ちゃんに何かあったら私、生きて行けないー!」
「ありがとう、華ちゃん、平気だから安心して?」
若菜の鋭い視線に生きている心地がしなかった。
「ほら、お母さんの方に…」
気を使い華に促す。
「あの人は大丈夫ですよー。何があっても死なないもん!」
「はーっ!?私だってモロに爆発に逢ったら死ぬからねー!?」
「いやいや、死なないでしょ!」
「死ぬって!」
「そんだけ元気なら平気よっ♪」
「もー、マジムカつくんだからっ!」
いつもの姉妹喧嘩が始まった。
「ほら、行きな?」
華英に背中を押され、足取り重そうに若菜に歩み寄る。挑発的な笑みで見つめる若菜に視線を合わせない華。華はそっと若菜の手を握り、ボソッと言った。
「でもまぁ、生きてて良かったよ…」
そう、素直になり切れない言葉を口にした華英の手は震えていた。若菜は華の本当の気持ちを感じた。
「あなた達置いて死なないわよ。華…♪」
その言葉を聞いた瞬間、華の目から大量の涙が溢れたのであった。
(あ、そーゆー事か!いきなり泣いちゃいそうだからまず私のトコに来たのね♪)
華英はそう気付いた。
(素敵で温かい家族♪)
華英はほっこりとして華と若菜を見つめていた。