動揺-1
麻由からだった。
「今日は有難うございました。それと、お店ですが辞めます」
(えっ、、、)
啓介は瞬く間に放心状態と化した。
なぜ、、、と考えたが、すぐに心当たりが浮かんだ。
バイトを辞める旨告げられ、、、動揺するなか啓介は一応確認を入れた。
「どうして?なぜ辞めちゃうの?」
どのような返答がくるだろう、、、携帯を手放すことなくそれを待つ。
とてつもなく時間が長く感じる。
「オーナー、、、さっきいましたよね?」
(・・・気づいていたのか)
無駄だと思いつつもシラを切ってみる。
「いたって?どこに?なんのこと?」
「惚けないでください。私を抱いたなかにいましたよね?」
どうすればよいのか、、、
シラを切り通すことが最善か、もとより胡麻かし切れるのか、、、正直に白状すべきか。
どのみち辞めるるとはいえ、給料の支払いがある。
幸いその日が間近で、啓介はそれを理由に来て欲しい旨を麻由に伝える。
麻由のほうもそれを承知し、二日後に店に来ることになった。
啓介は悩み、後悔した。
私は、色んな意味で麻由を失いたくない。いや、、、もう商売のことは啓介の頭には無かった。
麻由の魅力、、、もとよりそれは彼女のカラダのことではない。
あの歳にしてあの魅力、、、もともとそんなに異性に強い興味があるわけではない啓介を、この短期間で虜にした麻由・・・いまさら手放せない。
もちろん、カラダにも魅了された。
お世辞にも素晴らしいボディとは言えない。
「禁断の果実」なる表現があるが、まさに麻由のカラダはその表現となる。
特に啓介にとっては「決して触れてはならぬ」聖域、、、その禁を冒してしまった今、啓介に後戻りの道はなかった。