横芝の反撃-2
「会長、無事ミッションを果たせそうですよ?」
電話の声は片山副総監だ。
「そうですか。私どもの為に尽力してくれてありがとう、慎二君。」
穏やかな口調で答えるのは横芝会長、坂下秀徳だった。
「いえ、あくまでクリーンなコンペですから。横芝の我々警察の事を親身になって考え抜いた製品があってこそですし、これが本来の競合競争です。今までが異常だったし恥ずべき状況だった。」
「だがこんな状況になり、目立が黙ってないだろう。年間3億のシェアがなくなるんだからね。」
「目立と言うより高嶋謙也でしょうね、腑が煮えくり返ってるのは。きっと目立の社長に激怒してるトコでしょうね。」
「目立がらみの職員からの反発は?」
「いや、今の所何も。最近上原警視総監の指示で警察のダーティな部分の調査が出てるようで、その噂を聞いた目立がらみの人間は下手に騒げない状況になってますし、目立の担当からの電話はありません。今回は沈黙せざるを得ないでしょう。下手に動くとクビが飛び兼ねないですからね。」
「そうか。しかし上原総監は大したもんだ。どんな圧力にも屈しない。間違った事を間違ってると言い通すのは物凄く重圧がかかるものだ。それを受け止め、むしろ跳ね返すぐらいの強い正義感を感じる。彼女なら腐り切った警察の悪しき伝統を断ち切ってくれるかも知れないな。」
「ええ。日本の警察はああ言うリーダーを待ってたんです。彼女は本当に素晴らしい。まぁたまに宙を浮くとか訳の分からない特殊能力を見せるときはありますが。」
「はっ??何だそれは。彼女は超能力者なのか??」
「ええ、元ノウムの深野浄京と出会いそんな能力が身についたと言ってますが。」
「ハハハ、面白い女性だな。一度お会いしたいものだ。」
「この件が片付いたらそう言う場をセッティングしますよ。」
「楽しみにしてるよ。そうだな、早く目立との決着をつけなきゃな。私が率いた横芝の不遇を正徳の代で終わりにするんだ。これからは再び横芝が檜舞台に舞い戻るんだ。そして目立も正しき道に導くのだ。父への恩返しとなるんだからな。もう少し我横芝に力を貸してくれたまえ。」
「勿論ですよ。警察が正常な軌道に乗ろうとしている上原政権のうちにカタをつけましょう。」
「だな。今後とも気を抜かず頑張ろう。」
「はい。」
2人は同じ志に向かい堅い絆で結ばれているのであった。