佐久間亨の憂鬱Bー番外編-4
「からかうのやめてくださいよ。それにーー」
ぐっ、と亨は木綿子の腰を抱く。
「今横にいる、遠月さんが素敵だと思ってるのに」
じっと木綿子を見つめる。
体を触られているのが木綿子でなく、加奈子だったなら、理央はもっと激昂していたーー
亨は木綿子だったからこそ、殴りかかりそうになったのだと確信する。
「すげぇ、嫌だった。遠月さんがあんなことされてて」
「そうなの?」
「佐藤が、俺と中村さんがいとこだって知らなかったときに、俺が加奈ちゃんって呼んでるの聞いてしまって……この世の終わりみたいな顔してたんですけど。今ならその気持ち、よくわかりますよ。遠月さんが他の男に、いやらしい目で見られるの嫌だ」
「あたしは……佐久間くんならかまわないよ」
ふふっ、と笑って、木綿子は亨のネクタイに指をかける。
器用にするするとネクタイを外し、白いシャツのボタンを二つほど外すと、首元に唇を押し当てた。
「ん……」
ぴくん、と亨の体が震える。
木綿子の唇が半開きになって、首の柔らかいところを食む。
「ん、遠……月さん」
亨は腰を抱きとめている手をずらして、ピンクのカットソーの上から背中に触れる。
別の男が触ったそこをゆっくりと撫でた。
そうしていると、木綿子がひとつ、ふたつ、と亨のシャツのボタンを外していき、ズボンからワイシャツの裾と、中に着ているインナーの裾を引き抜いた。
「ん、う」
インナーごとたくしあげられ、亨の胸元が露出する。
たくしあげたシャツを左手で支えながら、引き締まった体に唇を押し当てた木綿子は、亨の太ももに右手を添えた。
そして小さめの乳輪に下を這わす。
「は、……ん、遠月さん…………んっ」
ぺろぺろと、子犬が水を飲むように、木綿子は舌を動かしていく。
さらには、太ももから細長い指をずらして、ゆっくりと亨の股間に添える。
唇を離すと、木綿子は亨の目をじっと見つめる。
潤んだ亨の目と、視線が絡まりあった。
「中村さんみたいな……おしとやかな女性のほうが好きなんじゃないの?」
「この、状況でそんな……こと、聞かないで下さい……」
じょじょに固くなるそこをさすられながら、亨ははぁ、はぁ、と荒い息を吐き出して言う。
「それは、中村さんの方がいいから?」
「ちが……う」
加奈子と比べて、木綿子を選択したつもりはなかった。
すぐさま、亨の口からそうではないという言葉が出る。
「遠月さんが……いい……」
「あたしだと、中村さんと違ってセックスできるから?」
「違いますよ………俺、本当に中村さんと佐藤がくっついて嬉しい、し……中村さんと、遠月さんを比べたことなんかない」