狂気の連鎖-8
『どうだ。驚きだろ?こんだけ居りゃあ弘恵ちゃんの住んでる直ぐそばにもお客様が暮らしてるかも……クククッ……ほぅら、やっぱり《居た》ぜえ』
「ッ………!!!」
その購入者は直ぐに見つかった。
弘恵の住む市の名前が、顧客リストの中にあった。
自分の生活圏内に、こんな本物の犯罪DVDを嬉々として購入する《危険人物》が住んでいた事実に、弘恵は強烈な衝撃を受けた。
『コイツはヤバい≠謔ネあ〜?さっき弘恵ちゃんの住所バラしちまったし、マジで下着とか漁りに行くかも知れねーぜえ?』
『なになに?{浣腸されてパニクるまゆまゆ。黄金マグマを噴き出して呆然とするまゆまゆ。完熟桃尻を犯されて泣き叫ぶまゆまゆ。全部サイコーです!}だとよ。いやあ弘恵ちゃん、喜んでもらえて良かったよなあ?』
『報道記者様よお、こんなヤベー奴が近くで暮らしてるんだぜ?遠くばっか見てねーで、もっと足元見たほうがいいと思うがなあ?』
「ッッッッ」
今度は別の作品の購入者リストに画面が変えられた。
それは戦隊モノのヒロインとして人気を集めた、新人女優の森口涼花のリストだった。
「ぃ"ぎぎッ!こ、コイツらもオマエらも、全員ブタ箱に入れてやるからあッッッ!!!」
悔し過ぎて歪みきった視界には収まりきれないくらいの顧客名が、ズラリと並んでいた。
それは田名部麻友のリスト数を遥かに上回るもので、小さくてか弱い少女に乱暴したいという凶々しいにも程がある欲望が、塊となって表れていた。
『なになに?{アニメ声みたいな涼花ちゃんの悲鳴が可愛過ぎます!つるぺたボディーにプニプニマンコ、大好物です!}……イヒヒ?ヤベーなコイツ』
『え〜と……{本気でイヤがる涼花ちゃんを観て、チンポがズル剥けるくらいシコる毎日。
次もJC熱望しますッ!}……どうする弘恵ちゃん?リクエスト貰っちゃってるよお?』
「さ…させないわよッ!!私がッ私がオマエらを止めてやるうぅ!!!」
『やって見せろよ。あのドアの向こうにゃズラリとパソコンが並んでんだ。編集もDVD作製も、全部あそこ≠ナやってるんだぜ?早く枷をぷっちぎって隣りの部屋に乗り込めよお』
上目遣いで睨みつける瞳から、悔しさと怒りの充満した滴が溢れた。
枷に握られた手首と足首。
金属と土という拘束とを繋ぎ止めている四個の《玩具》に、弘恵の姿勢は決定づけられたまま。
(……か…必ず此処から…ッ)
知り得た情報を持ち帰るのが、報道記者の使命だ。
親友の古芝風花が叶わなかった《願い》を、世に公表出来るのは自分しかいない。
『クククッ……その強気な目、堪んねえなあ。奥村かずさってヤツには少し劣るけどよお』
『モデルみたいに脚が長いなあ。でも津川明日香には負けるかな?』
取り囲む男共は余裕たっぷりだ。
絶対にこの拘束からは逃れられないという自信に溢れている。
哀しいことに、それを否定し得る力を、弘恵は持ち合わせてはいない……。