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ガリガル!!
【コメディ 恋愛小説】

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ガリガル2!!-6

諦められなかった。似合わないと分かっていたけど、でも、私には無理だった。その笑顔が好きで、好きで、大好きで…。だけど、私に向けられる笑顔は『友達』に対する笑顔だと思ったから。だから、ちゃんと『女の子』として見てほしかった。そのためには、私の見た目を変えて可愛い『女の子』にならなきゃいけなかった。
それなのに、響平は、受け入れてくれなかった。女の子らしい私は、私じゃないらしい…。私は響平の中で『女の子』にはなれないらしい…。恋愛対象には入れてもらえないらしい…。
もう嫌だよ…。辛いよ…。好きなのに、届けられない…。告白もしてないのに、望みが無い…。
千切れそうなくらい辛いのに、どうして…。好きのままじゃ、このままじゃ、また辛くなるのに、どうして…諦めたくないんだろう。
「きょー…へ…」
そっと、名前を呼ぶ。
「はぁーい、お呼びですか?」
膝に顔を埋めた私の頭上から、来る筈の無い返答が返ってきた。
「え?…響平」
私は驚いて顔を上げると、響平が私の前で仁王立ちしていた。が、すっ…と腰を屈め、私と同じ目線になった。
「何で泣いてんだよ」
困ったように、響平は首を傾げる。
「…私、響平にちゃんと見てほしかったの」
「見てんじゃん」
「違う!女の子として、恋愛対象に入れてほしかったの…」
「え…?」
私は一呼吸置いて、自分の気持ちを伝えた。
「私、響平が好きなの。響平が、女の子らしい子が好きって言うから…頑張って、女の子になったの…」
「チィ…」
「好きなの、響平が…。ずっとずっと、好きだったの…」
響平の顔が見れなくて、私は目を伏せた。私にこんなこと言われて、響平は迷惑じゃないだろうかと頭の片隅で考えた。
「んなことかよ…」
響平がぼそっと呟く。
「あのなぁ、じゃあ、俺も言うけど…チィは、ずっとずっと女の子だったぞ」
信じられない声がする。ゆっくり響平の顔を見ると、真剣な瞳が私を見ていた。
「入学式のあの時から…誰も手伝ってくれなかったのに、チィだけは教科書を拾ってくれた。そん時から、見た目は俺よか格好いいけど…でも、チィはずっと女の子だった」
目頭の辺りが熱くなる。
「そんで、チィをいろいろ知っていく内に好きになった。チィは、そこらの見た目だけの女より、ずっと女の子らしかった」
響平がぼやけて、つぅと涙が頬を伝った。
「じゃあ、何で…あんな…?」
響平は少し視線を外すと
「ビビったんだよ、あんま可愛いかったから…。他の野郎がチィをジロジロ見てるのがヤだったんだよ」
と、恥ずかしそうに笑った。
「見てなかったよ」
「見てた!あれは、チィを狙ってた…!」
「まさか、私なんか…」
私は力なく笑ったが、響平は「いやいや!」と首を振った。
「『なんか』とか言うな!チィはガリガルなんだからな!」
「…がりがる?」
今度は私が首を傾げる番だった。
「そっ、がーる いん がーる。英語風に言うとガーリンガァル。縮めてガリガル!!」
びしっと、響平は私の鼻辺りを指差した。
「チィはガリガル!!女の子の中の女の子…」




よし!
私はお弁当が四つ入った紙袋を持って、家を出る。
「おはよう、響平!」
「チィ、おはよ」
あれから一週間。私は、響平の彼女になることが出来た。
「今日は何弁当?」
「今日は、秋刀魚です」
「おぉ、和風だな!」
結局、メイクをしたのはあの日一日だけだった。お弁当を作る時間が無くなるのが要因。あと、もう一つは…。
「メイクしてないのな」
響平が私の顔を覗き込む。
「だってお弁当作れなくなるし。それに響平が、メイクすんなっつったんじゃん!あんなことも言ってたし」
あの日、一時間目の授業が終わると同時に、私たちは二人で教室に戻った。そして、響平が黒板の前に立ったかと思うと「いいか、女に飢えた男ども!今日からチィ、いや阿笠 千百合は俺の彼女だ!!チィの可愛いさに気付けなかったお前等!羨ましがっても遅ぇんだかんなっ。絶っっ対にチィに手ぇ出すなよっ!!」と叫んだのだった。
「だって本当のことだし…」
「恥ずかしかったよ。…嬉しかったけど…」
語尾の方は小さくて、響平には聞こえなかったようだった。
「何だよ、俺は死ぬほど嬉しかったのに。まっ、いっか」
響平は太陽のような笑顔を私に向けた。
「チィは、俺だけの女の子だもんなっ!」
私も、響平に負けないくらいの笑顔で強く頷いた。


[fin.]


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