side 優依 24 ATOKとファイル管理ソフト WINFMの話-1
優依と幸子が居間で
優依の父親が来るのを待っていると
チャイムが鳴る
優依、幸子、恵美子らが
玄関に向かうと優依の父親が
「久保田さん 優依、迷惑かけたりしなかったです?」
そう聞いてきたので
恵美子と幸子の母親は
「迷惑なんてとんでもない」
「むしろ おさむの食事介助して貰って助かってました」
二人の言葉を受けて
優依を見ながらホッとする優依の父親
「そうですか これからもよろしくお願いします
ゆきちゃん これからもよろしくね」
「うん」
「それじゃ、優依帰るとしよう」
「おじゃましました 2月はもう少しこれら来ます」
優依がそう言うと
恵美子は奥の部屋を一瞬だけみたあと
「無理しない程度にね」
「うん それじゃ、ゆきちゃんは学校で…」
「うん」
そうして優依の父親が運転する車の助手席に乗る優依
車が発進して久保田家から出て行き
車の中で優依の父親が口を開いて優依に聞いてくる
「どんなこと話してたんだ?」
「学校のこととか将来のこととか…あとはお父さんのこともちょっとかな」
優依の口から
自分のことという予想外のことが出てきたので
優依の父親は驚いて
優依を横目でちょっと見て
「俺のこと? どういうこと?」
「あ たいしたことでないけど…お父さんの勤めてる会社って
大企業でしょ」
「あ そう言われればそんな部類の会社だな」
「それでいて…お父さん技術系でしょ」
「うん 一応 工事とかそっちの方」
「それだと転勤もあるんじゃないのかなって」
「確かに工場を新設とかそうなるといかされる可能性も
今のところは辞令もないけどな」
「可能性が0じゃないわけだから
引っ越しもあるしここから離れる可能性もか」
「そう言う話をしてたと」
「うん そう」
「優依としてはどうしたい?」
「残れるなら残りたいけど無理な話でしょ?」
「うーん 選択肢はいろいろあるよ?」
「そうなの?」
「まずは俺が単身赴任すること」
「それはやめた方がいいと思う 家事とか出来ないでしょ」
「うん まぁ…」
娘の指摘にちょっと発の悪い顔をする父親
「それ以外の選択肢なら…優美の実家 優依から見ておばあちゃん
おじいちゃん家に預かって貰うこととか」
「おじいちゃん達の家に? 可能なの?」
「引き受けてくれるとは思うよ?
すくなくても…俺の実家よりはこの街にあるわけだから」
「お母さんと優花はお父さんについて行くかかたちで」
「うん そうだね お父さんとしては優依にも来て欲しいけど
そう言う選択肢もあるから
まだ辞令がないのに今から悩まなくていいからな」
「ありがと」
そして
優依の父親はもう一つ気になったことを口にする
「将来のことって?」
「何になりたいか そんなところの話」
「それで優依はなにになりたいの?」
「うーん 料理作るの好きだから料理人めざしたいなとかはある」
「そうなんだな 和洋中どれで?」
「今のところはそこまでは決めてない」
「そっか」
「あと もう一つ 介護職も考えたけど」
「え?」
びっくりする優依の父親
「けど…って…やめたと言うこと?」
「おさむくんに介護職はすすめられないって言われた」
「そうなのか」
(彼は確かに介護受ける側だし介護職の現場の大変さとかも
見ているから…かなぁ)
「腰痛めるからとか大変とか…すすめたくないみたいだった」
「なるほどな 優依としては?」
「わたしとしては介護の勉強もしたい気はあるけど
料理と方向性が違うしどっちか片方がいいかなと」
「そうだねぇ 両方は難しいから」
「まぁ、中学まで普通にして高校受験の時に決める」
「優依 ほんと今からそんな先のことまで考えてて
小学生なのか…」
「あはは らしくないよね わたし」
「頭いいのは嬉しいが…まだ10歳なんだから
子どもらしいこともして欲しい気もしないでもない」
「子供らしくかぁ 考えとくね」
しばらく会話がとまり
外を眺めながら助手席に座っていた
優依がおもむろに口を開く
「あ そうだ」
「ん? 突然 どうした?」
「あ うん おさむくんのパソコン触ってて気になったことあった」
「どんなことだ?」
「日本語入力 わたしのパソコンと違うこと」
「あ、あぁ…ATOK入れてるからだな」
「えーとっく?」
「彼のパソコン Windows標準の日本語入力使ってないから」
「そう言えば…おさむくん 昔から使ってるとかいってた」
「いつも見ているメモ帳あるだろ?」
「あれもATOKPADと言うソフトだから」
「と言うことはATOKに付属していたメモ帳?」
「だいたいそんなところ で、ATOKがどうした?」
「どこが違うのかなとか 日本語変換の仕方も違うようだけど」
「うーん 一般ユーザーにはたいして変わらないから
完全な趣味というか変換手順が身についてて
ATOK以外使いたくないとかじゃなければ
入れる人も少なくなってきてるから」
「そうなのね わたしのパソコンに入れるためにはどうすれば?」