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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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異変-2

恵は正輝が近付いて来るのは分かっていた。彼女の体に埋め込まれたチップのセンサーが接近者の存在を知らせていたし、それが正輝だと教えてくれた。正輝は知らないが正輝の体にもチップが埋め込まれており恵はいつ何時でも正輝の居場所が分かるのだ。

恵は正輝の行動に戸惑っていた。理解に苦しみ、シップのAI『マザー』に尋ねる。マザーは、地球の全ての電波、通信を傍受し記録管理している。そして地球の全ての生物、中でも人類は観察の主たる対象でもある。マザーの返答は、

〈あなたを性的対象と見ているのよ。〉

との事だった。恵は分からず、

(性的対象とは?)

と母家の前にある納屋の地下室に置かれたシップのマザーとは恵の頭の中の多目的チップでやりとりする。思考がそのままマザーに伝わるのだ。マザーは、

〈性欲、性的欲求を満たす相手の事よ。〉
〈性欲は生殖行為の欲求の事だけど、実際には生殖、受精を望まない場合でもその行為を行うの。〉
〈かつてのアルファもそうだったのよ。〉

と教えてくれた。アルファは恵の星の名前だ。恵はようやく理解したが、

(でも私は母親。)
(母親もその対象て普通?)

と疑問を持つ。マザーは、

〈普通では無い。人類でも禁忌、タブーな事だとの認識よ。〉
〈でも無くはない、近親で性行為をする人達はいるの。〉
〈でも正輝がそうなったのは私達の育て方にあったのかも?〉

と返して来た。恵は唸り、考え込む。正輝が物心付いた頃から正輝には母親の恵以外の人と交渉しない事を強く言っていた。それは正輝が他の人達、人類と違うからでそれが露見するのを防ぐ為だ。当然、学校などにも行かせないつもりだった。

だが小学校に上がる年齢になると、正輝は自分も学校に行くと言って聞かなかった。どうやら知らない間に近所の子供と交流が有り学校の存在を聞かされたらしい。その頃は未だチップは正輝には埋め込まれていなかった。幼少期のチップは成長に悪影響があるとされ、埋め込まれたのは15才を過ぎた頃だったのだ。

恵はマザーと相談の結果、友達を余り作らない事、人前でその並外れたパワーを絶対に見せない事を約束させ正輝に学校の入学を認めた。正輝が何か問題を起こして騒ぎになれば、別の場所に移動すれば良いだけだが目立ちたく無かったのだ。

正輝は、特に問題を起こす事無く恵の言い付けをこれまでずっと守ってくれていた。中学生にもなると野球部などの運動部への誘いは有ったが断り、その驚異的な身体能力を披露する事もしなかった。

マザーが言うには、大人しく内向的な性格で友達も少ないとの事だった。親しい友達は、譲二位でその姉の純菜とこの前性的な行為をしたと報告を受けていた。その報告に恵は、少し焦ったが生殖を伴う行為では無く、いつも正輝が行っている自慰に近いものだったらしい。


 『Vel』は地球に居住し溶け込むには、マザーの勧めも有り地球人の姿がベストだと考え死亡したばかりの上野恵の身体を借りた。恵の脳の記憶を読み取り身寄りも無く、お腹の子の父親とも別れたばかりだと分かり最適だと判断したのだ。恵の脳にVelの脳そのものを転写する『融合』を行い、恵の身体にVelの遺伝子を加えて任務可能な肉体に強化した。

恵は妊娠後数ヶ月で死亡していて、恵の身体を修復する過程で宿していた子、正輝も死亡しているとの医療ユニットの判断だった。だが、実際は胎内にて仮死状態であった様だと後に判明する。正輝の名も恵の記憶から名付けられた。

母体がアルファ人の遺伝子を加えられた為、当然その胎内にいた正輝にもアルファ人の性質が受け継がれた様だ。アルファ人は、遺伝子操作によりどんな過酷な状況にも対応出来る様に体を極限まで強化されていた。

地球上の最強の生物も『Vel』との融合体恵は素手で軽々倒す事が出来るだろう。また強化スーツ無しに短時間なら宇宙空間でも生存できる。

正輝の成長を注意深く見守っていた恵とマザーは、程無く正輝がアルファ人の特徴を持っている事に気付いた。身体的能力が同年代の人類の子供達と較べて桁違いなのだ。恵とマザーは正輝の処遇に悩んだ。

だが、正輝の存在に最初に気付いた時と同じ様な結論に辿り着く。正輝の存在を今さら無かった事には出来ない、だから正輝に行動の制限を厳しく課した。今では、マザーも恵もマイクをアルファの一員だと見なしていた。


 恵は髪を洗う為、シャンプーを少し手に取り洗い出す。正輝が浴室に通じる廊下に進んで来るのが分かった。恵は、

(正輝に注意すべき?)
(あなたがやっている事は異常な事だと。)

とマザーに尋ねる。マザーは、

〈Vel、そう言えば彼は傷付くわ。〉
〈ここでは、正輝の年には年の近いパートナー、ガールフレンドが出来てその相手と性的な行為する事が多いの。〉
〈正輝は、私達が他人との交渉を抑える様に言って育てて来た事が原因でとても内向的に育った。〉
〈正輝の年頃は性的な目覚めが有るのは自然な事なの。〉
〈ガールフレンドを認める?〉

と提案する。マザーは、恵に大事な事を伝える場合アルファ名のVelで呼び掛ける。普段は、この星に溶け込む為人類名の恵を使うのがお互いの取り決めだが。恵は悩み、

(分からない…)
(どう考えるべきなのか…)

と返していると正輝が浴室の壊れた扉の隙間から覗いているのが見えた。


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