お母さまよりきれい? ドウラ-1
城主のエリ卿の妻は、上流階級の中では最下層の家に生まれた女だった。
女はわしの口添えで、男爵夫人となると、社交界の味をしめ、毎晩のように首都へ遊びに出かけるようになった。
そんな奥様にも子どもが生まれ、キオネと名付けられた。
ある日、わしがふと笑ったのを見とがめた。
「何がおかしいの」
「言いたくねえです。光の奥様」
「私を裏切るのかい」
奥様がわしを追い払わないのは結婚できたのを恩義と思ってくれたおかげだ。だが、そんなもの、ひと言で、ひと動作でくつがえってしまう。
「城主がメイドに手を付けたすぐ後での子だと思い出したのです。お強い城主だ」
母は育児を放棄するようになり、城に帰らない日が多くなった。そして、「汚いものは大嫌いなの、むこうへやって」 と、わしに言ってキオネを追い払わせた。
「ドウラ、私は美しくないの?」キオネが寂しくつぶやく。
「子鹿のようにかわいい。だが奥様はもう少し美しい」わしはずっと横に座っていてやった。
馬番のかたわら、釣りや狩りにもつれて行って、「姫ちゃんも、ずっと綺麗になれる」なぐさめ続けた。
十二歳の頃のことだ。
「綺麗になったな、いつでも社交界へデビューできそうだ」そう言ってやっていた時、奥様が通りかかった。
「お母さま私もつれてって」 キオネがおねだりする。
「邪魔」奥様は通り抜けようとした。
「私だって、もう美しいわ。おかあさまより若くて、まっさらなのよ」
そのとたん、奥様が手を上げた。「わたくしと張り合おうというの」
そしてわしに「おまえ、皮剥ぎは得意だろ。これの服も剥いでやりなさい」
「へい。薔薇の奥様」この女は本気だ。
おどろくキオネの服を剥ぐと、大人並みの乳房をながめる。
「おまえにあるのは『若い』だけよ。下の毛も生えてないような小娘が偉そうに」ののしる。
「ドウラ、これを犯しておしまい」
「へい。春の陽の奥様」
足を無理やり開かせ、硬く閉じ、濡れてもいない所へつっこんだ。
「痛い、やめて」叫ぶのも無視して力でねじ込んでいった。
赤い血が、足に垂れる。
「ほら、もうきたならしい使い古しだわ」母が笑う。
「いやぁ」
「馬番が嫌なのなら、あとは馬くらいしか相手がないわね」部屋を出て行った。
わしは楽しみ続けた。
姫はそのわしをなぐりつけ、「お前を殺してやる。どうして私の命令を聞かないの」
「奥様の命令です。従わねえわけにはいきません。やって見せるしかねえでしょう」
「なら、すぐやめて」
しかたがない、あわてて抜いてやる。
「ああ、ひどい奥様だな」キオネの内ももについた血を指でこすって舐めた。
「やめなさい。私を汚したくせに」
「汚れてません、子鹿のように美しいですよ」もういちど体に触れる。
「いやよ。わたしって、あの女より美しい? きれい?」
一瞬声が詰まる、「それは‥」
「もういい。あの女の方がいいのね。それなら、あの女をヤッてしまって。じゃないと許さないから」
「わかりやした」
奥様をつかまえると軽くかついで、だれも寄り付かない塔に連れて上がった。
「汚い手を放しなさい」奥様が叫ぶ。
「では、馬になさいます?」キオネが笑う。
わしは、既婚者とは思えないほど開いた奥様の胸元に手を突っ込み、そして股をまさぐる。
逃げる奥様を窓際へ追い詰めた。
スカートをたくし上げると、欲求不満にそそり立つわしのものを突っ込む。
「おやめ、けだもの」奥様はむなしく叫ぶだけだ。
「あらまあ、お母さまったらはしたない」垂れ下がり、突かれるごとに揺れる母の乳房にさわった。
「ねえ、私の前でドウラやられるのってどんな感じなの、悲しい? 悔しい?」
抜き差しするわしの竿に触れ、蜜壺の縁をなでる。
やがて奥様は窓の外に向かって声を上げ、もだえ始めた。
「淫乱な女だわ。ドウラはどっちがいい、私? この女?」
「こいつはすごく、具合がいいんです」思い切り突き入れる。奥様が吠えた。そしてしがみ付いて来る。
「お母さまったらドウラがそんなにいいの。汚い、そいつを捨てて」キオネが冷たく命令する。
わしは昇りつめ、放出の最後のひと突きで奥様を窓から落とした。
それから外を見降ろした。「まるで水辺を彩る赤い彼岸花じゃねえですか」それは遠く地面に倒れる奥様の姿だ。赤い花びらが広がっている。
キオネは塔の階段を駆け下り母親の元へ向かった。
「お母さまはもう私をのけ者にはできないわ。もう私を押しのけて遊びにも行けないのよ、どう?」母親に見とれている。
奥様は黙って天を見上げていた。
「ああっ、何か言って。無視しないで」
無言。
「姫はかわいい」わしは、キオネを後ろから抱きしめた。わしの『獲物』だ。
山の中を追い込み、撃ち倒した母鹿の横にたたずむ子鹿のように。もうのがさない。
あのときの快感を思い出すと、股間がうずき、身震いする。
あとは子鹿にしたように、こいつの中にも最後まで注ぎ込んでやるだけだ。ドレスの前を引き裂き、乳房を揉む。
キオネは放心したようにそれをわかっていない。
「わたしだって、きれいになってやる。そしたらお母さまだって私を抱きしめて『お前は美しい』と言わずにはいられなくなるのよ」血の中へ座り込んだ。
つぶれた後頭部を隠す髪が赤い海の中に広がっている。血の抜けた真っ白な顔。
赤い唇は語らない。
血をすくい、自分の唇に塗った。 「どう、私ってお母さまくらいきれい?」
「美しい」つぶやいてしまう。わしは黙って、気配を消しているべきだった。
血をすくい、自分の乳房に塗りたくった。わしを振り返って、「赤いドレスは、お母さまくらい美しい?」
「もっと美しいです」わしは逃げた。
まずい、これは子鹿じゃねえ。
キオネは恍惚としてそれをわかっていない。
人の子でもねえ。