白樫邸のノラ ノラ-1
ふと目を覚ます。薪ストーブでは、まだ火が静かに燃えている。眠ってからそんなに立っていないようだ。
ほとんど真っ暗な中、それでも猫の俺には周りが見えた。
レイがかけてくれたのだろう、毛布をよけて、上半身起き上がる。
レイは横のベッドで、寝ていた。
冷たい雨の日に、俺がこの家に連れてこられて一週間になる。
肺炎もよくなってきて、食欲も性欲も出てきた。
≪何て無防備な女だ≫ レイの布団をそっとめくり、盛り上がる乳房に手を当てた。
この子はネルのワンピースの夜着で寝ている。寝る時にブラは付けていない。
起きないよう注意を払って、柔らかい感触を楽しんだ。
それでも俺のものは大きくはなってくれなかった。
布団を剥いでいく。
夜着の裾が持ち上がり、白くて細い太ももから尻が見えてきた。
俺なんかを信用しているのか、馬鹿なのか。それともさわってもらえるのを待っていたのか。
白いパンティーの上に手を置いた。
―――この部屋に連れてこられた日。
「あなたには秘密を作らない、いいことも悪いことも」とレイは言った
「私は恋人を作らない。私には呪いがあって、いつ死んでもおかしくないの。あなたは感情的にならずに、私が抱ける?」
「死んだ後のことまで、人のことを考えるのですか」
「そこまで人間ができてないわ。 私で遊びたいかと聞いてるのよ」
「あなたは恩人です。俺は、しないと思います」
俺のは使えないんです。と言う勇気はなかった。―――
眠ったままのレイがパンティーの中に手を入れて、俺がしたい事を自分でし始めた。
寝息が少し荒くなる。
≪いい夢を見るんだね≫ しばらく胸をなでてやったが、レイが寝返りを打ったので、身を引いた。少し離れてレイの喘ぐ姿をながめていたが、そっと部屋を抜け出した。
二階の廊下でほっと息をつく。
俺が『あなたで遊びたい』と言っていたら、今頃はレイの腕に包まれていたのだろうか、叩き出されていたのだろうか。
どちらもできない自分の体を呪った。 腹が立って、そうなると俺は自分がわからなくなるときがある。
『オレ』は立ち上がった。
レイの自慰をする姿を思い出して、股間の物を大きくした。オレが遊んでやれる事を『俺』は知らない。
『俺』はオレが時々、女を襲いに行くことも、朝になって、なぜ気分がいいのかもわかっていない。
メスどもはヤラレたがっている。口を押さえ意識をモウロウとさせれば、後は薄いパンティーを横にずらすだけだ。前戯もいらない。突き刺して、突き刺して、排泄してやる。それですっきりだ。
この黒い猫の毛は闇に紛れ相手には見えない。女は手触りで小柄な筋肉質の男だと思うのだ。
だれがオレを見て犯人と思うだろう。
レイを襲う? オレは野獣だとしても怪物ではない。黒猫として求められ、人として認めてくれた恩は忘れない。だから、あの子とは人として接してやる。 なに、服の上から触るくらいは、挨拶だ。
外へ出ようとしたが、シャワーの音がした。
そっと行ってみる。脱衣スペースに女物の服、パンティーをさぐりあてて、においをかいだ。≪ヒメか≫
レイの母親だ。まだ三十半ばのいい女だ。
オレは病み上がりで調子ももうひとつだった、レイのを見て、したくなっただけだ。≪この女にしておこう≫ すでに裸なのも手間がなくていい。
浴室の明かりを消し、闇に紛れて中へ入る。
ヒメに抱きつく、ふたりも子を産んだとは思えない乳房だ。
「なんですか」あまり慌てていない声。
そのまま押し倒す。が、頭を打たないように腕でかばってやる。
「あら、やさしいんですね」
そんな評価に腹が立つ。
いきり立ったものを挿入してやった。≪どうだ≫ 心地よい締め付け。 しばらくぶりで、それだけで漏らしてしまいそうなほどだ。
ヒメは叫ばない。中に入ったままで抱きしめられた。
≪このオレが捕まった。まさか≫
「そんなにしたかったのに、娘は襲わなかったのですね」
こいつはオレがだれかわかっている。もう逃げても無駄だ。≪殺ってしまうか≫ それは浮浪者の頃の反射作用だった。
「どうして? 約束をしたの」
オレはうなずいていた。人を殺せるはずがない。≪この家ともお別れだな≫
流れ歩くのは、孤児院を抜け出してから、いつものことだった。
「そう、いい子ですね。それならあなたに任せておけますね」
いつものことなのに、出て行くことに腹を立てていた。≪えっ≫ 「任せる?」
「そうですよ。こんなにしたいのに、娘は守ってくれる。私がいいのですか。では、野獣じゃなく、人のようにあつかってくださいね。」オレが腰を振れるように、抱きしめる力を弱めた。
「オレは‥」 ヒメの中でオレのものが小さくなっていく。
「『俺』は‥」 ≪何してるんだろう≫ 頭からシャワーの湯がかかっている。
体の下にはレイのお母さんがいて、馬乗りになっていた。股に俺のしなびたものが乗っている。
「可哀そうに」抱きしめてくれた。
俺のものはヒメにこすれて、折れ曲がり、押しつぶされる。
代わりに、乳房が顔に当たった。
俺はその乳首をくわえ、甘噛みする。
「俺でいいんですか」
「いいえ、あなただからですよ」お母さんがうめく。
強くし過ぎたかと、力を抜いた。
その俺の頭を抱えて「いいんですよ」
そのまま吸いつくと、あったかいシャワーの水が乳房を伝って、母乳のように口に入ってきた。心地がいい。
ずっとそうしていたかった。≪これじゃあ、赤子だ≫
「いいのよ。今ではあなたも、私の子なのですから。これはいつでもあなたのものです」
それは俺にとって呪文だった。
≪くそっ、この人はオレの母チャになっちまった≫
もう抱くことなんかできない。
しかし、母チャはいつでも俺を抱きしめてくれる。それで安心できた。
「いっしょにレイをたすけましょうね」