K説得-1
宮田をミナミの居酒屋に誘う。
難波冷蔵から北摂水産の配達を丸投げしたかったからだ。
彼の水曜日の弁当配達を休みにした所以だ。
それで佳乃と会う時間が半日に伸びる事になる。
宮田は快く受け入れてくれた。
「お世話になっている部長の頼みは断れないないですよ。
約束通り時給は上げて頂いたし割のいい仕事も毎週させて貰っています。
生活も随分潤いました。ありがとうございます。」
「それは君に我が社に残って貰う為の条件だから当然だよ。」
「でももう一つの条件は無理ですよね。無理に決まってます。」
「いや。大丈夫だ。もう少し待ってくれ。僕は約束を守る男だよ。」
こんな経緯があったのだ。
翌週の水曜日は二人でたっぷり愛し合った後リビングでお茶を飲む時間があった。
「どうしたの?今日の湊君とっても優しかったわ。いつもは私の事虐めて喜んでいたのに。
私、嫌というほど逝かされて満足っていうか幸せな気持ちよ。」
「それは僕の御願いを聞いて貰う為の伏線だよ。」
「お願いって何よ?あんなに優しくしてもらったら私怖いわ。」
「実は・・・・・・・・・・・・・・・・・して欲しいんだ。」
「何を言ってるの。そんなこと出来る訳ないでしょ。私の事なんだって思っているの。」
そこで先週夢うつつの間に約束した録音を流す。
「佳乃、下半身がうごめいているよ。嫌らしい。
そんなに逝きたいのか?
それじゃ俺の寝取らせ願望を満たしてくれ。佳乃に他人棒の味を教えたいんだ。」
「ああ〜判ったわ。何でもするから、お願いよ。これ以上焦らされたら私狂っちゃう。」
「よし約束だぞ。さあ逝け。」パンパンという後背位の高速ピストンの音と佳乃の歓喜の泣き声が響く。
「本当ね。私そんな約束などする訳ないのにさせられてしまった様ね。
でもあの時の私は正常じゃなかったのよ。あきらめて下さい。」
「義母さんそれじゃまた同じ話の繰り返しだよ。
約束したのは事実だしそれを反故にするなら僕も約束を破る事になるよ。」
「またあのDVDで私を脅すのね。あれだって恥ずかしい言葉を言わされて消すって約束だった筈よ。」
「判った、判った。義母さんが約束通り寝取られてくれるなら僕も約束を守って完全に消すよ。」
「でもやっぱり無理よ。私そんな破廉恥な事出来ないわ。」
「以前にもママ友の話で真似できないといっていた行為は何だったかな?
確かシックスナインの体位、おもちゃ遊びのバイブ、ハメ撮りだったよね。
しかも『あの子の破廉恥は異常だわ。』とまで言っていたはずだ。
その破廉恥な行為、母さん全部喜んでやってるじゃない。
経験してしまうと破廉恥じゃなくなるんだよ。」
「その時と今回じゃレベルが違うわ。絶対に嫌よ。」
「あーもう時間だ。行かなくちゃ。あのDVDがこの世から消えてなくなるか、
義父さんの手に渡るか、よく考えるんだな。その気になったらLINEしてくれ。」
言い残して事務所へ降りる。
佳乃からのLINEはない。
3日目、仕掛ける。
親族グループにトークを送る。
親族グループとは義父、義母、結衣、湊の4人だ。
「まもなく素晴らしい動画を送ります。お義母さんがとっても可愛く撮れています。」
瞬間、湊のスマホが鳴る。思った通り佳乃、湊の2人グループだ。
「馬鹿な事しないで。判ったから。言う通りするから。」
「駄目だ。義母さんはいつもそんな嬉しい約束をしてくれて直前で嫌だって言うじゃないか。
もう騙されないよ。ぼくは頭に来ているんだ。」
「私が悪かったわ。約束は約束よね。今度は必ず守るから怒りをおさめて下さい。」
家族グループに義母が変顔をして結弦をあやす動画が送られる。と同時に
「決行は来週の水曜日だ。
男は10時ごろそっちへ行くからそれまでに結弦を寝かしつけて準備をしておくんだな。」
と佳乃へのラインも届く。
最悪の事態が避けられてホッとしたが時間が経つにつれて新たな不安が湧き上がる。
「私怖いわ。湊君お願いだから他の条件に変えてくれない?
どこの誰かも判らないエロ親父に抱かれるなんて私とても出来ないわ。」
「もう男には連絡済みだ。とても喜んでいた。
今更断れないよ。それに変なエロ親父じゃないよ。
大学生の童貞君だ。水曜日の10時だからね。」と念を押す。
実はあの最初宮田を居酒屋に誘った時どんな条件を出しても説得出来ず
会社で待つ社長に電話しようとしたがバッテリー上がりで出来ず、宮田の携帯を借りた。
店舗内の騒音でよく聞こえず外に出る。
その時携帯から事務所で仕事をする佳乃のポートレートを発見する。
居酒屋に戻り「宮田、悪いけどこんな写真見つけてしまったよ。お前専務の事好きなのか?」
「いえ、好きとかじゃなくて憧れているだけです。アイドルの写真を持っているのと同じなんです。」
「そうか、確かにいい女だし品もあるから君が憧れるのも無理はないな。
どうだ、どうせ退職する気なら一度口説いてみたら?
断られてももう会う事のない相手なんだから気にしなくていいじゃないか?」
「僕、女性を口説いた経験も無いんです。それに専務を不快な気にさせたくありません。」
「宮田お前もしかして女の経験ないんじゃないか?」
「あっはい。恥ずかしいけど童貞です。」
「もし専務が筆下ろしをしてくれる事になったらどうする?」
「そんな事あり得ませんが最初は専務クラスの美人で清潔な方が理想です。」
「で、どうする?」
「そんな夢が叶えば僕なんでもします。」
そんな経緯があって宮田の退職を封じたのだ。