B友人の母-1
二回生になって出来た新しい友人の母親の美貌に惹かれて訪問を重ねる。
母親は山下浅海39歳、その名の通り女優の水川あさみとそっくりで年齢も同い年だ。
が、口説く術まで教わっていないので遅々として思い通りには進まない。
いつもの様に恭子を抱いた後尋ねてみる。
「お母さんはどうして僕なんかの筆下ろししてくれたの?」
「あの頃の湊は姫路の田舎から出てきた純朴な少年そのものだったわ。
私が何とかしなきゃって思ったのよ。今のギラついた湊だったらお断りね」
上目使いに思い出しながら笑う。
(そうだった。恭子を堕とした事で女性を見る目が変わっていたんだ。)
それに気づいてすぐに修正するのが湊の長所だ。
それ以後ちょっと田舎臭い純朴な真面目人間の仮面を脱いだことはない。
そのお陰で結衣と結婚できたし両親も婿養子として認めてくれたのだ。
友人の母浅海の態度も変わった。
何かと気遣ってくれるのだ。
「都会に染まっちゃ駄目よ。今の若い子たちってSNSで簡単に詐欺仲間に入ったり薬をやったりするでしょう。
それにナンパしたりされたり乱れまくっているわ。湊君やうちの息子にはそうなって欲しくはないわね。」
「僕は鈍くさい程の真面目人間ですからそんな心配は無用ですよ。僕より山下君の方が飛んじゃう可能性があると思います。」
「そうなのよ。あの子最近帰宅は遅いし何か悩んでいる様なんだけど私に何も話してくれないのよ。」
「二人とも19歳ですからね。親離れは当然なんですよ。でも親友同士は色んな相談をし合っています。」
「あの子どんな事に悩んでいるの?」
「ちょっと心配な事もあるんですけどそれはお母さんでも言えません。
チクったって思われるからです。そうして信用を失うと親友とは言えませんからね。」
「そんな事を言われるとますます心配になるわ。」
仕掛けておいて黙って帰宅する。
翌日も訪ねる。
情報の欲しいお母さんは息子や夫がいない時も湊を招き入れる様になる。
「ちょっと心配な事って何よ。」
「その前に聞くけど山下のやつバイク欲しいって言ってなかった?」
「うん。先日パパに大型バイクねだってわ。」
「ああ、やっぱりだ。お母さん絶対に買っちゃ駄目ですよ。」
「どうして?何かあったの?お願いだから教えてよ。」
「駄目駄目。これ以上は話せません。」
何も話さず帰宅してしまう。
お母さんは心配で心配でたまらず湊にLINEする。
が、既読無視だ。
翌日は山下とともに帰宅する。
「母さん、今日は湊に晩飯食わせてやってよ。」とだけ言って部屋から出てこない。
「あなた達お部屋にこもって何の話をしているの?」夕食を食べながら母が聞く。
「ほっといてくれよ。」ぶっきらぼうに答える息子。
父親も会話に入れず静な夕食が続く。
三日後お母さんからのLINEが連続する。
「これ以上既読無視するなら我が家を出禁にします。」怒りの最後通告だ。
優しいお母さんの変身ぶりに異変を感じ返信する。
「たいへんな事が起こったの。明日来てください。君だけが頼りなの。」
「分かりました。でも前にも言ったように親友を裏切る様な行為は出来ませんがそれでもいいですね?」
「何でもいいからとにかく来て。」
「どうしたのですか?お母さん顔色悪いですよ。」
「昨日息子が二人の友人を連れて来たの。その二人茶髪と金髪で鋲を沢山打った革ジャンを着ていたわ。
それにサングラス家に入っても外さないの。どう見てもまともな人たちじゃないわ。」
「そうですか。あの5人組とうとう家にまで来ましたか?」
「来たのは二人よ。」
「5人組の内の2人ですよ。」
「そんな悪5人がうちの息子とどんな関係があるの?」
「あっもうこれ以上は話せません。」
「何言ってるの。そんな事言ってる場合じゃないでしょう。あの子の事考えると気が狂いそうだわ。」
「でも話せばたった一人の友人を失うことになります。」
「怒るわよ。話さないならもう帰りなさい。二度と我が家に来ないで。」
「わかったよ。話すよ。そのかわり山下の代わりにお母さんに親友になって頂きます。それでいいですね。」
「いいわよ。早く話して。」
話し始める。