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パンドラの箱
【ファンタジー 官能小説】

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パンドラの箱-15

「お願い、ここまでにして」 まさかの暴言だ。
「嫌か」
「そんなつもりじゃなかった。ただ、もう少し待って」ノラに抱きついて言う。
ノラは石になっていた。
≪ほう、石になってでも耐えられるのか。まさに石のように固い意志だ≫ 感心した。
ふたりは抱き合ったまま、寝ている。 わしは自分の体に戻った。

明け方早く、わしの布団の中にパンドーラが潜り込んできた。
「どうした、ノラと一緒じゃなかったのか」
うなずく。 「でもできなかった」
「どういうことだ」
「おれ、さわられても気持ちいいふりしてた。悲鳴を上げてしまいそうで、最後までできなかった」
「逃げてきたのか」
「でも、嫌われたくない」
「なら、女を否定するな。男だけでいる必要はない、両方になればいい。女なのに気付いて、それでもあの野獣は待ってくれたんだろ」
「じいちゃん、どうしよう」
「どうしようって、心は決まっているんだろ。 しょうのないやつだ。おいで」 抱きしめてやる。
この子は傷ついた女だ。丁寧に扱ってやらないとすぐに壊れてしまう。
「おまえはノラが一番気持ちの高まったときにやめさせたのだよ。彼はよく止められたものだ」
うなり声が聞こえた。
そのまま抱き締めていてる。
「女としてもおまえさんは大丈夫だよ」体を離す。 「おまえの中の女は元気だ。ただ、ひさしぶりなんで慣れておらんだけだ。おまえが邪魔せずに、時には女も認めてやれればもっと楽しめるんだよ」
パンドーラは山を下りていった。
朝になって、ノラがひどい顔で起きてきた。
「パンドーラはいい子だ。寝たのかい」ノラに言う。 「いいんだよ。若いもんは互いに自由にすればいい」
恥ずかしがっているようだ。それを隠そうと、「そんなことより、おれの治療はいつ始めるんですか」
「ほら、おまえはまた急ぐ。すべての物事はすぐに成せるとは限らないのだよ。それなりの時間をかけないと熟成はしない。パンドーラをはじめて見た日、おまえはあの子を抱くこともできただろう。だがそうしていたら、今のようにパンドーラからキスをしてくれるような相手にはならなかっただろうよ」
ノラは下を向いていた。
「魔法も同じ、無理やりかけてもその多くは自然に元に戻ろうとする。完全な破壊とたゆみない愛だけが永続的な結果を生むのだよ」
次の日パンドーラは綺麗な服を着てきた。スカートこそはいていないが、立派に女の子に見える。
「なんと美しくなったね。ここにも花が咲いたようだよ」母親のものだろう、花柄のブラウスを着たパンドーラを褒めた。
ふたりは崩れそうで危うい部屋で二人きりになって抱き合っている。パンドーラはもう止めなかった。
そんな二人を見ながら、弟子どもはどうしてこんな時に来ないのかと、腹が立つ。 ≪今こそとっておきの技を伝授してやろうものを≫
『無理やりでない、たゆみない愛』だよ 二人にはこの言葉を繰り返し送った。
それからの十日間はそんな日が流れた。
もうそろそろノラに処置を施すいい頃合いだろう。

ノラの中にはいろいろな人格が住んでいる。活性化している者、待機している者、休眠している者、死んだような残骸。どれが出てくるかはわからない。
そこはこれからの生活で安定して出てくる人格も決まってくるだろう。
体の細胞に施されたひどい呪文と改造は、体の持つ自然の治癒力を高めることで消すことができてきている。
普通に生活する分には十分だ。 あとはほっておけば、やがて治る。
さて、最後の試練だ。
朝のこと。
「口を閉じよ。そしておまえにその気があるなら、今日一日、身を清めた後、断食をして瞑想せよ」ノラに言い渡す。
水を汲んできて体を洗わせると、二階の小さな部屋に入れた。
無地のカーペット以外何もない。じっと座って瞑想させる。


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