『babyface baby』-1
帰り道、家の近くの大きな公園の中をいつものように瑠璃は小走りで抜けていた。
ここを通って帰ると15分位早く帰れるのだが、鬱蒼とした林の中なのでやはり恐い気
持ちもあってどうしても瑠璃は走ってしまう。
もう子供じゃないから大丈夫よね、等と自分に言い聞かせながら急いで急いで、大学
からの帰り道に毎日ここを通る。
瑠璃は大学二年、もうすぐハタチ。ただ、生まれついてのベビーフェイスでどんなに
お化粧しても高校生か、あるいは中学生のようにしか見えないのだった。なので母親
からはいつも心配して、「瑠璃、あの公園とか抜けて帰って来ちゃ駄目よ、貴女は子
供っぽく見えるんだから誘拐されちゃうわよ」と言われていた。
「大丈夫、大丈夫…」一人念仏のように呟きながら薄暗くなり始めた公園を抜ける。
ザザッ!!
凄い音がして物影が前に飛び出した。
「ひゃあっ!!!」
瑠璃が悲鳴を上げて見ると、それは大きなゴールデンレトリバーだった。
「あ、ごめんごめん、驚かせちゃった?」
後ろから若い男が走って来た。
ゴールデンはなつっこく瑠璃にじゃれる。
「ふわぁ、驚いたぁ。あ、大丈夫です〜ちょっとびっくりしたけど…可愛いですね〜」
「うん、こいつ女の子が好きでさあ…飛び出して行っちゃうんだよね…へへ」
「そうなんだぁ…よしよし…ホント可愛い♪…お名前は?」
「え?…知りたい?…」
「え??」
「ルリっていうんだよ…」
「えっ…!?」
瑠璃は男の方を見上げる。男がニヤリと微笑んだ様な気がしたと同時にバチッという
衝撃を感じた。
ドサッ…
…………
(ここ…どこ?)
(あれっ?えっ??)瑠璃は眼を覚ますと手も足も動かない事に気付いた。痛い…縛
られている??
車の中の様だった。
薄暗い車内、大きめのワゴン車の後ろの様だ。
(さっき、どうしたんだっけ…ん、んっ?)「痛っ…!」
無理に身体を動かそうとして余計に手首の紐が食い込む。
「起きたの?瑠璃ちゃん…さっきはごめんね…スタンガン、痛かったよねぇ?」
先程の男が運転席から覗き込んだ。
「ねえ?何これぇっ?止めて!!ねぇっ?」「止めてって言われても、せっかく瑠璃
ちゃんが俺の元にいるのに止める訳ないっしょ?」
運転席から身体を起こし大の字に縛り付けている瑠璃の身体の上を乗り越えて男は瑠
璃の開かれた足の間にしゃがみこんだ。
「うーん、ホント可愛いね瑠璃ちゃん。いくつになっても子供みたいで…」
「いくつにって…ねえ貴方誰?何で私の事知ってるの?ねえ?ねえ?」
瑠璃が恐怖で顔を強張らせると男は眉をしかめて哀しそうな表情をした。
「解らないんだ…やっぱり…」
瑠璃が困惑していると続けて口を開いた。
「解らないんじゃ……お仕置だね……」
「え??」