10 居酒屋の人-1
最近サチは自宅から歩いて5分のところにある居酒屋“華”という店に通っていた。
毎週末になると決まってこの華に通っていたのだ。
店自体はとても古くて近所の常連さんがよく来ている様だった。
サチは常連の仲間にはまだなっていなかった。
この日もサチは夕方になると華に行っていた。
華はこぢんまりとした居酒屋だった。
カウンターがあり、奥に座敷が少しだけあった。
サチはこの日もひとりカウンターで飲んでいた。
すると、ちょっと背の高く痩せて眼鏡をかけたいい感じの男性が店に入ってきた。
その男性は作業服を着ていた。
仕事の帰りらしかった。
「ママ〜!ただいま〜!」
「タカシおかえりなさい」
そうママと名乗る女性が言っていた。
その男性は青山タカシと言う名前だった。
年齢は35歳くらいだった。
サチはこの青山のことが気になっていたのだ。
そんなある夜。
いつのようにサチは華の店でひとりお酒を飲んでいた。
そこへ青山がやってきたのだ。
サチは青山に声を掛けた。
「仕事の帰りなの?」
「うん、仕事の帰りさ」
青山はそう答えるとママにお酒を頼んでいた。
ママは嬉しそうに青山と話をしていた。
サチはひとりでお酒を飲んでいた。
暫くするとサチは少し酔ってきた。
お店にはサチとママと青山しかいなかった。
青山がサチに話かけてきた。
「どこからきてるの?」
「歩いて5分のところからよ」
「そうなんだ」
「うん」
「眼鏡外してみて」
この頃サチは目が悪くなり眼鏡をかけていた。
眼鏡を外すサチ。
「眼鏡外すと可愛いじゃん?」
青山はそう言ってきたのだ。
お店も閉店近くの時間になってきた。
青山がサチにこう言ってくる。
「家まで送るから一緒に出よう」
サチはかなり酔っぱらっていた。
青山に促されるまま店を出た。
サチは青山にもたれかかるようにして歩いて行った。
「今夜、家に行くから玄関の鍵開けておいて」
「え?玄関の鍵?わかったわ」
サチは半分意味が分からなかったが鍵はかけないようにした。
サチは自宅に帰ると直ぐにパジャマに着替えて睡眠薬を飲み眠ってしまった。
翌朝…。
サチは誰かの腕枕で眠っていたらしくそこで目が覚めた。
横を見ると知らない男性がベッドに寝ていたのだ。
その相手を良く見てみた。
するとその人はあの青山だったのだ。
サチは驚いてしまった。
どうやってこの部屋に入ってきたのだろうか、と思ったのだ。
昨夜の会話を思い出した。
玄関の鍵は開けておいてくれ…と言われていたのだ。
青山はサチの手を取ると自分の膨らんだ股間に触らせてきた。
青山のペニスは大きくなっていた。
「朝立ちしてるの?」
サチはクスっと笑って青山を見た。
青山は笑っているだけだった。
その後サチは自分の携帯がないのに気が付いた。
眼鏡もパソコン机になかったのだ。
ちょっと慌てたサチだった。
素早く青山の体を飛び越えて携帯を探した。
サチは家電から自分の携帯に電話してみたのだ。
すると呼び出し音が聞こえてくる。
携帯はパソコンの陰に隠れた机の上で充電されていたのだ。
眼鏡はベッドの脇にレンズが外れて落ちていた。
そのふたつを見つけるとサチは落ち着いたようだった。
「じゃ、俺帰るわ〜」
「えー?帰っちゃうの?」
「うん、俺も携帯どこかに落としたっぽい」
「携帯落としたの?」
「俺の携帯番号に電話してくれない?」
そういわれるがままサチは家電から電話をした。
呼び出し音が鳴っていたがどこから鳴っているのかわからなかった。
「たぶん、近くの道で落としたんだろう。探しに行ってくる。じゃ、帰るから。それと今日のことはママには内緒だからね」
そう青山は言うと玄関で靴を履きドアを開けて出ていった。
サチは拍子抜けしていしまった。
サチは眼鏡のレンズをフレームに入れた。
するとパチンと音がしてフレームに収まった。
数日後…。
サチは青山に会いたいと思っていた。
でも、彼の電話番号を知らなかった。
連絡のしようがなかったのだ。
そんな事を思っていた時だった。
サチの家の電話が鳴ったのだ。
「もしもし…」
「あ、俺、タカシだけど?」
「え?青山さん?」
「そうだよ。元気にしてる?」
「うん、元気だけどどうして私の家電の番号知ってるの?」
「だって、この前俺の携帯に電話してくれたじゃん?」
それを聞いてサチはそうだった…と、思ったのだった。
暫く二人は電話で話していた。
サチはとても楽しかったのだ。
「今度、ウチで飲まない?」
「え?鮎川さんの家で?いいの?」
「いいわ。遊びに来てよ」
「わかった。でも、このことはママには内緒だよ」
「うん、わかった」
話し終わると電話が切れた。
サチは青山とまた会えると思うと嬉しかったのだ。
数日後…。
青山は華のお店が閉まってからサチの家にやってきた。
夜も12時を回っていた。
青山はかなり酔っぱらっている様子だった。
倒れ込むようにしてサチの玄関に入ってきたのだ。
酔った勢いでサチの事を抱きしめてきた。