ハイスペック人妻 柳原紀子-4
紀子は鉄平が近づく姿にドキドキする。そのドキドキは超イケメンが近づいて来るからのドキドキではなく、鉄平から何か危険な雰囲気を察知した事から来るものであった。
「べ、別に指示していた訳じゃ…。ね、ねぇ、何で撮ってるの!?」
何故か2人がスマホで撮影している姿を見て不審に思う。
「気にしないで、紀子さん。」
鉄平が目の前に来た。心臓がさらにドキドキする紀子。無意識に体が後退りすると、レジが置いてある台に体がつき行き場を失う。
「あ…」
いつもの自信に満ち溢れた男性な美顔に恐怖の色が浮かぶ。
「紀子さんにはもう少し男を敬う気持ちを持って欲しいよね…」
その言葉と、追い詰められた緊張から紀子は思わず遠慮を欠いた発言をしてしまう。
「鉄平くん、入ったばかりなのにちょっと偉そうじゃない…?」
いくらみんながメロメロのイケメンでも、社歴はまだ全然浅いし自分の方が長い。新人が何を偉そうに、そう思ってしまった紀子はそれでも少し柔らかく言ったつもりではあった。
「(いいねぇ、この気の強いトコ!調教しがいがあるわ!)偉そうでしたか…。すみませんねぇ。」
これまでフェミニンマインドの女子はみんな自分に媚びてきてすぐに股を開く女ばかりだった。紀子みたいに反論して来る女がいないとつまらない、鉄平はそう思い喜んだ。
「私はいびってるんじゃなくて指導してるの。これからも指導は辞めないわ。いくら鉄平くんのお願いでも、ね。」
自分が動揺しているのを悟られない為か、強気を貫く。
「じゃあそれなら生意気な俺も指導して下さいよ。俺もお願いを聞いてもらうよう、紀子さんを指導しますから。」
「わ、私に指導…?新人のあなたに私が指導されるの?意味が分からない…。」
「俺は新人と先輩の間での指導をするつもりはないんですよ。男女間の指導をしようとしてるので。」
「だ、男女間…?」
「ええ。問題は紀子さんが紀子さんがもう少し男を敬う気持ちを持ってくれるようになって欲しいと言う事なので、先輩後輩は関係ないんで。ちなみに失礼ですが、夫婦間でもベッドの上では常にリードしないと気が済まないタイプだとか?」
「!?2人とも…言ったわね?」
紀子は紗理奈と涼子をキッと睨んだが、2人は焦りながらも聞こえないふりをしてスマホを向けて撮影を続けている。
「紀子さん、たまには男の下になるのも勉強になりますよ?フフフ」
鉄平の不敵な笑みにゾクッとさせられた。