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【ミステリー その他小説】

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GAME-5

コトッと音がした。
兄が主人公を動かすのをやめ、コントローラーを床に置いたのだ。
兄が私を見た。
瞬きもせずに直視している。
「もう、これから何をしようとしているのか分かってるね?まだなら最悪な想像をしてごらん。それが正解だ」
私の頭を駆け巡る悪夢に、恐怖が弾けた。
何とか体が動くようになり、やっとのことで声を出せた。
けれど、その声は悲鳴とは程遠い消えそうなくらい小さな声だった。
「い…いや…ヤメテ」
兄の両手が迫ってくる。
目標が分かった。
私の首だ。
「どうした?叫んでごらんよ。信頼を寄せていたはずの兄に裏切られる憐れな妹の叫びを!」
私の首に兄の両手が食い込んだ。
「う、…」
息が苦しい。
声が出せない。
脳に通うはずの血が行き場を失う。
目の前が、段々と歪んでいった。
私は、これが現実の世界なのか、仮想の世界なのか、分からなくなっていった。
そして、私のすべてが…暗闇となった。


自分は、一体何をしてしまったのだろうか。
我に返った時には、もう手遅れだった。
手に温かみが残っている。
そばには、永遠に動くことがなくなった妹だった人間が横たわっている。
とうとう自分は、自分の中に潜む狂喜の獣に負けてしまったのだ。
この両手で、自分の最も大切で最も愛しい者を殺してしまったのだ。
笑いが込み上げてくる。
「ふ…ふふ…ふははは」
止まらない。
止められない。
自分は壊れてしまったのだと分かった。
もう、人ではないのだ。

死体の山に立つゲームの主人公に別れを告げ、電源を切った。
階段を下りて母親のそばへと近寄り、母へ別れを告げた。
車に二人の死体を乗せ、父親の帰りを待った。
帰ってきた父親のただいまを、さようならで返して包丁で刺した。
車にもう一人死体が増えた。
遠くへ行こう。
自分が育った家に別れを告げ、車を走らせた。
自ら台風へと向かうように進んだ。
遠く、とても遠くの地の山に行き着き、そこで三人を埋めた。
妹の墓は両親より立派にした。
暴風雨の中、三人の墓の前で、これから自分はどうなるのだろうかと考えた。
何処から事件を知った警察が、自分を迎えに来るかも知れない。
それならそれで良いと思った。
いや、そうでなくては面白くない。
そう…、この世界はゲームなのだから。


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