妻を他人に (3) 計画-2
「んんん……! ぁむ、んんぐ……っが……! んんんぁ……んぷぷぶ……んんんん!」
口、膣、肛門の三つの穴をすべて塞がれ、潮の香りを撒き散らしながら、美人妻は再び高みに達した。
*
居酒屋の喧騒の中、私とZはさっそく「ゆきの貸し出し計画」立案に入る。
意外と言ってはなんだがZは慎重かつ大胆。彼のプランは女性心理のきめ細かなところまで考えが及び、ゆきの負担や心理的ハードルを最小化しつつ、いたって普通の貞操観念を持つ人妻に股を開かせるアイデアにあふれていた。女性の扱いに長けている男というのはそういうものなのだろうか。
「Zがゆきを普通にナンパするってのは?」
「人妻さんナンパしたこともあるけど、成功するのは基本旦那さんに不満抱えてる人だけですよ。Oさん夫婦は仲良いんでしょ?」
「まあ、いいとは思う」
「じゃあ難しいかもな。やっぱり最後はOさんがゆきさんにストレートにお願いするしかないんですよ」
「オーケーするとはまったく思えないんだが」
「そこは持っていき方です。まずはハードルの低いところから始めましょう」
「たとえば?」
「Oさんが寝取られマゾなのはゆきさんも知ってるんですよね」
「うん」
「反応はどうです?」
「嫌がってはいない、というか最近じゃナンパされたり飯に誘われた話をこれ見よがしに言ってくるよ」
「それはいい傾向ですね。Oさんが嫉妬で興奮しちゃうのはゆきさんにとって嬉しいことなんですよ」
「たしかに俺がそれで激しくすると、けっこう感じてくれてるみたい」
「ゆきさん、実はエッチが好きな女性かもしれないですね。だからたまに旦那さんに激しく求められると嬉しい。嬉しいからOさんの性癖刺激するようなことを言いたくなる」
「ゆきが本当にセックス好きな女だとしたら、よく今まで浮気もせず早漏淡白な俺で満足してたな」
「満足してなかったかもしれないですよ」
「う……」
「実は浮気もしてたりして」
「そういうこと言わないで。リアル浮気はさすがにキツい」
「ははは。まあずっと仲良しなら大丈夫ですよ。浮気しやすいのは旦那さんとうまくいってなくて、なおかつセックスが好きな女性。ゆきさんみたいなちゃんとした奥さんならなおさら、条件両方揃ってないと浮気ハードルは越えません」
「逆に言えば夫婦仲が冷めてて、エロい女は浮気する、か……。ゆきはどっちも当てはまらん」
ほっと胸をなでおろした私に、Zがにやりと意味ありげに笑った。
「さっきも言ったけど俺はゆきさんエロいと思いますけどね」
「まさか。自分で言ってるぞ。あんまエッチ好きじゃないって」
「短小早漏な旦那さんに気を使ってるだけかもですよ?」
「ときどきお前、ずばっと来るな」
「実は夜な夜な一人でオナニーしてたり……」
「あ……っ」
「あれ? 思い当たっちゃいました?」
私はゆきが昔からオナニーする習慣のある女であることを伝えた。週に何度か、こそこそ楽しんでいるらしいこと、大人のおもちゃのヘビーユーザーであることも。
「ほーら。確定ですよ」
「そ、そうだったのか……」
私は彼女のオナニーの事実を知りながら、自らの希望的観測に基づき「エッチは好きじゃない」という妻の「優しい嘘」を、そのまま鵜呑みにしていたということか。にわかには信じがたいが、しかし――。
「となるとあとは夫婦仲か。ケンカでもすればいいのか?」
「そっちは仲良しのままで大丈夫です。浮気じゃなくて寝取らせなんですから」
「なるほど。ということは……」
「はい。条件揃っちゃってますね」
Zに相談を決意した時点ですら到底実現不可能な戯言と軽く考えていた「寝取らせ」が、にわかに現実味を帯びてきたように思え、私は少し怖くなった。
「とはいえ、普通の奥さんは貸し出されたりはしません」
「そりゃそうだ」
「そこで大事になってくるのが、さっきも言った『持っていき方』ですよ。Oさんはぜひ、変に格好つけず自分の性癖に正直になって『俺が興奮するから』、『俺のために』で通してください」
「自分勝手な夫って思われないか?」
「むしろ思われてください。奥さんに、『夫が言うから』、『夫のために』、こういう言い訳を用意してあげるわけです」
「うーむ」
「当然お二人が仲良しであればあるほど、Oさんの率直なお願いは効果を発揮します。さらにゆきさんの場合は、旦那さんが寝取られマゾで興奮するのを望んでいるフシがありますから、言い訳を用意してあげるのはとくに重要です」
「メリットとか説明しなくていいのか? イケメン細マッチョとヤれるぞとか、Zはセックス上手いぞとか。いや、お前が上手いかは知らんけど」
「要らないですね。それ言っちゃうと逆に承諾しにくくなります」
「なんで?」
「承諾するとまるで自分が『イケメン細マッチョとセックスしたい』『夫よりセックス上手い男に気持ちよくしてもらいたい』と意思表明してるみたいになっちゃうから」
「別に意思表明してもらって全然いいんだが」
「男目線ではね。女性はそういうことは絶対隠したい生き物なんです。ゆきさんみたいにずっと『エッチ嫌い』で通してきた奥さんであればとくに」
「な、なるほど……」
「あ、ただ写真は見せたほうがいいです。女性はそこで清潔感の有無をまずチェックするはずです。Oさんから俺を売り込むようなこと言わなければ大丈夫」
卓上の料理に手を伸ばすことも忘れ、Zの言葉に耳を傾ける。