久しぶりの恋人@-7
酔って顔がほんのりピンク色になった加奈子が微笑むと、とても可愛かった。
加奈子は腕を離して、いつもとは違う足取りでバスルームへと向かう。
理央は加奈子がシャワーを浴びている間に歯磨きを済ませ、黒のタートルネックと、ジーンズを脱いで、Tシャツに下着姿という格好になって、寝室のふすまを開けた。
暗い部屋の中の、枕元。
未開封のコンドームの箱が置いてある。思わず理央は笑った。
(どんな顔して買ったの?これ……)
真面目な彼女のことだ。おそらく「佐藤くんが持ってきたのばかり、使ってるから」という理由に違いない。
その時、加奈子がバスルームから出てきた音がした。
「寝室、いる」
理央は加奈子がいつも寝る布団の上に座って待っていた。
開いたふすまの隙間から、高い位置で髪の毛を団子にしている加奈子が紺色のパジャマ姿で入ってくる。
「ゴム、買ってくれたんですか」
理央はくすっと笑うと、フィルムを剥がして箱の中からいくつかコンドームを取り出す。
「だ、だって……いつも、佐藤くんの……」
予想通りの回答に、笑いを隠せない。
「いいんだよ、中村さんに怖い思いさせたくないんだもん」
「どんな時でも、持ってるよね。天下のヤリチンって感じする」
「中村さんもそれ言うの?!ひどい!」
ふふっ、と加奈子は笑ってふたつ並べられた布団の真ん中あたりにぺたん、と座る。
そして、団子状に結ばれた髪の毛を縛るゴムを外した。
水がかかって、表面が少し濡れた髪が下ろされる。
常夜灯もつけられておらず、暗く、遮光カーテンの隙間からほんのり入る光に加奈子が照らされていた。
理央の鼓動が速まる。
加奈子を抱き寄せ、唇に自らの唇を押し当てた。
理央の唇の弾力を加奈子は感じたが、その唇は震えているらしかった。
「どうしたの…?」
「いや、何か…緊張しちゃって」
「天下のヤリチンなのに?」
「だーかーらー!何で中村さんまで!もう」
ぎゅっと加奈子の体を強く抱き締めて、押し倒す。
「僕、自制しないとこの間みたいになるの。本間さんにだって……中村さんにだって」
「佐藤くんは、優しいよ。だから、好きにして。お願い」
加奈子は両頬を手で挟み込むようにすると、理央の唇にキスをした。
さらには理央の頭を抱え込んで、理央の舌を引っ張り、甘噛みして求める。
「ん、ぅ、…んっ」
理央の口から、吐息が漏れる。加奈子の舌はなんと卑猥なのか。
脳を揺さぶるそのキスに、理央も舌を絡めて応じる。