久しぶりの恋人@-4
「予定があったり、中村さんが一人でいたかったりするなら、帰るけど。そうじゃないなら、一緒に過ごしたいな」
理央はスマートフォンを伏せてローテーブルの上に置くと、キッチンの辺りに立つ加奈子に笑いかける。
「ん………わかった。もう、いとこにお膳立てされるあたしって……」
顔を真っ赤にしながら理央の座る横まで行って、腰を下ろす。
理央はそっと、右手を加奈子の腰に回した。
「感謝しないとな……亨に」
体のラインを確かめるようにウエストの辺りを撫でたかと思うと、ジーンズに包まれた臀部に手を置く。
「今日……泊まってく?」
加奈子は潤んだ目で、理央を見ながら言った。
先程まで、家に送ることを提案していたのに。理央にこんなふうにされたら自制が効かなくなってしまう。
「嫌じゃない?」
「ん……佐藤くんと、ゆっくりしたい」
加奈子は理央の背中に左手を這わせて、理央を愛おしく思いながら撫でた。
*
一旦理央を自宅まで送った。
着替えなど、加奈子の家に置いておきたいものがあれば持ってきたらいいと、提案したのだった。
準備をさせている間、加奈子は二人で食べる食事の買い物をしに、大型スーパーに出かける。
一度家に理央が泊まっているとはいえ、男性と付き合うなど久しぶりで、ましてやーー亨によれば「天下のヤリチン」。
(まあ、わかるけど?!すごく……気持ちいいし……優しいし)
加奈子は買い物かごを持ちながら、昨夜の情事を思い出して思わず自らの腹部を押さえる。
ずくん、と子宮が疼いてしまったからだった。
買い物を終え、理央をピックアップしに、再び会社近くの理央の自宅前を訪ねる。
黒のタートルネックに、革のジャケット。細身のスキニージーンズを履き、コンタクトはつけなかったのかメガネをかけている。
そんな理央を見て、やはり女性から声をかけられるのは当然だろうな、と思った。
加奈子は自宅に着くなり、外出前に回しておいた洗濯機から洗濯物を取り出して、リビングから出られるベランダに干していく。
「何か手伝う?」
理央に後ろから声をかけられた。
「ううん、大丈夫だよ。お客様だもん。って、お客様の前で洗濯物干すの、ダメか」
加奈子は笑って答えた。
「お客様じゃないでしょ〜。僕、この家に荷物置かせてもらう関係なのに?」
「ん……そっか。あたしもそう思ってるから、洗濯物、干しても大丈夫って思うのか。……あ、さすがに、下着は中に、リビングのカーテンレールに吊るしてるの……生活感あるけど、許してね?」
加奈子の自宅は、生活感があるとは言ってもかなり整頓されている。
あまり、加奈子自身荷物を置かない主義なのだろう。
男性の持ち物が一人分ないのだから、普通の家庭より荷物が少ないのは当然かもしれないが。
「気にしないよ。中村さんのパンツ見られるってことでしょ?」
「ちょ……、バカ」
そんなやりとりすら、加奈子にとっては愛おしかった。