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願い
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願い-1

時は2014年…。度重なる核戦争が各国の平和条約によりようやく終焉を迎えすでに5年が経つ。しかし平和条約とは名ばかりのもので、軍事的権力を持った国が同盟を結び、力で世界を支配する世の中になっていた。力の無い国は逆らう事も出来ずにただ涙と悲しみの日々を送っていた。日本もそんな国の一つであった…。


「春菜!そろそろ休憩にしようか。」
「うん!じゃあお弁当取って来るから夏輝はここで待ってて!」
そう言うと春菜は畑を耕していた鍬を置いて小さな木の小屋に戻った。
「はぁ〜。しかし21世紀になってるにも関わらず、こうやって畑仕事をしなきゃいけないなんて…、昔の日本はもっと楽で裕福な暮らしをしてたのになぁ〜。」

核兵器により草木・土が荒れてしまい、復興作業が今でも続いている。終戦から5年経った今も重たい税金のために汗を流している人々があちこちに見られる。そんな村の2人が夏輝と春菜であった。

「お待たせ!はい、夏輝のお弁当だよ!」
「ありがとう。…なぁ春菜。」
「ん〜?どうしたの?」
「俺達いつになったら裕福な生活が送れるのかな?」
「う〜ん…。いつだろうね〜?けど私は夏輝と一緒にいれればそれでいいかな!」
春菜はお弁当を食べながら夏輝に笑ってみせた。
「そっか…、そうだよね。毎日一緒にいれるだけでも幸せなんだよね!」
夏輝はそう言ってお弁当のおにぎりを口に頬張った。

「さて、そろそろ始めようか!そうだ春菜、悪いんだけど肥料を買って来てくれないかな?もうすぐ無くなりそうだからさ。」
「うん分かった!じゃあ行ってくるね!」
「ごめんね、じゃあ気をつけて行ってきてね!」
こうして夏輝は畑仕事を再開して春菜は街に買い物に行った。夏輝が仕事を再開してしばらくすると、軍服姿の男が3人車に乗って夏輝の所へやってきた。
「おい、そこの男!コードナンバーを言え!」

コードナンバーとは人間一人一人に付けられた番号の事で個人情報は全てこのコードナンバーで扱われていた。

「はい、私はJ-F-02440808です。」
夏輝の言ったコードナンバーを聞くと軍服姿の男の一人が、持っていた機械にナンバーを打ち込み始めた。
「え〜っと、お前は北川夏輝だな?お前には我々政府から貸した金があったな?」
「はい、おかげさまで畑を耕すための肥料が買えまして、今年は去年より収穫が見込めそうです。」
軍服姿の男は夏輝の言葉を聞き、いやらしく笑った。
「そうか〜、それは結構な事だな。それなら税はいつもの三倍は払って当然だな?」
夏輝はその言葉に驚きを隠せなかった。
「ちょ、ちょっと待ってください!!三倍だなんて!いつも収穫の九割を税として納めてて手元に残るものなんて微々たるものなんですよ!!三倍もの税を納めるのは無理ですよ!!」
夏輝は必死に軍服姿の男達に訴えた。世の中が変わってしまった今、税を納められないという事は死よりも恐ろしい拷問を受けるということを意味するからであった。
「今年は実りが良いのであろう?それに金を政府から借りておいてお前には感謝という気持ちが無いのか?無いのであればこちらにも考えがあるぞ?」
男は夏輝に小型銃を向け再びいやらしく笑った。夏輝は歯を食いしばり引き下がる事しかできなかった。
「夏輝〜!買って来たよ〜!」
ちょうど夏輝が引き下がったと同時に春菜の声がしてきた。
「おい、そこの女!止まれ!お前のコードナンバーを言え!」
春菜は買って来た肥料を置いて、
「はい。私のナンバーは、J-O-24380511でございます。」
男は春菜のコードナンバーを機械に打ち込みだした。
「ほぅ…、お前達は夫婦か。北川春菜…、お前は綺麗な容姿をしておるし真面目そうな女だな…。」
男はイヤらしい目付きで春菜のことを舐めるように見て、しばらくして夏輝に言い放った。


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