恋売り。〜愛の行方〜-1
今日はいいこと、ありそう。
本能的にそう思ったんだ。
下駄箱でクラスの子に
「長嶋さん、おはよー。」
って言われた。
でも、あたしは軽く会釈するだけ。
「怖いー…。」
くすくす笑いながら、どっかへ行ってしまった。
まただ。たぶん、目つきが悪かったのだろう。
あたし、長嶋乃乃(ながしまのの)は、目つきが悪い。んてもって、態度もそっけない。
だから、怖がられる。
「はぁー…。」
でも、あたしはただの人見知り。
この外見と態度のせいで、高校でできた友達は、いない。
寂しくは、ない。
だって、人は生まれてくるのに、独り。死ぬときも、独り。
だったら、なんで生きるのに独りでいないの??
あぁ、考えんの、疲れた。
「はぁぁー…。」
もぅ、HRだけでて、帰ろうか。
そんなこと考えてたら、いつまにか教室のドアの前。
あ、あたしの席に誰か座ってる。
そいつは蓮本蛍輝(はすもとけいき)だった。
「あー…。」
なんとなく、ためらった。
すごくダルそう。
蓮本は、たぶん学年で一番人気がある。
女の子にやさしいし、かっこいいし。
なんとなく、目が離せない。
こういうとき、やさしー女の子だったら、一言「大丈夫??」って言うのかな…。
そう悩んでると、後ろから人が来た。
ちょっとごめんね、とクラスメイトの中野巳耒(なかのみずき)が通りすぎてく。
中野が蓮本に話し掛ける。
うん。あたしも行こう。
…。
まぁ、タイミングを逃した…ってやつだ。
うーん、でもここでうろうろしてらんないし、今度こそ行こう。
なんか言い合ってる。
近づいていく。
「なにもめてんだよ、人の机で。」
あぁ、かわいくない。
蓮本が振り向く。
「あれ、これ、長嶋の席??わりぃな。どーぞ。」
ふと思った。
「…蓮本、おまえ、ホストとかやってんの??」
席をどいた蓮本に問う。
「なんで??」
なんでって言われても…。
「なんか、そんな感じがした。」
「男前??」
「は??」
まぁ、確かにいい男とは思うけど。
不審に思ったのが伝わったのだろう、真面目に答えた。
「まさか。違うよ。」
なんとなく、ほっ。
「な、な、俺は??ホストっぽい??」
中野は会話に入れなくて寂しかったのか、聞いてきた。
いやそれは…。
「あんたはね、馬鹿っぽいから、ないな。」
かっこいいけどね。清楚っぽくて。蓮本は…うん、オールマイティにかっこいいかな…。
って、なに分析してんの、あたし。
「しょっく!!」
あー…、そっか。もうちょい、かわいい言い方もあったかな。
こんなあたしに愛想をつかしたのか、2人は離れていった。
まぁ、喋れたし、いいことあったから、今日は授業受けていこう。