特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.2-7
「島原」
ふと目線を左に移すと、隣りの席の西岡が小声で話しかけて来た。
高校では珍しく、男女で机をくっつける列の取り方をしているのは、人数の多い特進クラスだかららしい。
ペタリとくっつかった隣りの席の人物、西岡忍の事を、美樹はあまり好ましく思っていなかった。
(なんか、裏がありそうなのよね。うさん臭いっていうか)
美樹の第六感は、西岡を要注意人物だと決めている様だ。
「なに?」
授業中だから、美樹も小声で返す。勿論、顔の筋肉を定位置に持って行き、いつもの調子で返事をした様だ。
「ノート見せてくれる?俺さぁ、英語ん時寝ちまっただろ?」
キツネ目の西岡は飄々とした様子だから、何を考えているのか想像が付かない。不信に思いつつも、とにかく美樹は英語のルーズリーフを数枚取って西岡に渡した。
「はい、これ今日の分だから。ごめんね。私、ルーズリーフ派なの」
こういう言い方が抜け目ない美樹だ。西岡は、サンキュー、と礼を言い、現代国語の授業で在るにも関わらす、英語のノートを写し始めた。
教壇では、禿げ上がった中年教師が教科書を読み上げている。期末考査前なのに、全くもってマイペースな教師に、内職をする生徒が続出中だ。
「島原、ここ」
小声で西岡がルーズリーフを指差した。ボーッと教科書を見つめていた美樹は、西岡の声で我に帰った。
「スペル、これで正しいのか?」
美樹の綺麗な文字が並ぶソレを指差し、美樹の机に置いた。
の、だが
ギュッと美樹の身体に力が入った様だ。顔色は明らかに悪くなっている。
ノーパン淫乱女
確かに、西岡の字でそう書かれていた。そして、そこを指差しているのだ。
「間違ってる?」
キツネ目をより細くして西岡は笑顔を作った。あの一瞬で、美樹は凍り付いてしまったままだ。
冷や汗が背中を伝い、美樹はうんともすんとも言えない。
放心している美樹を横目に、西岡は持っていたシャーペンで何やら更に書き足した。
自分で触って証明しろ
美樹も頭の悪い女では無い。この場で拒否れば最悪、こんな程度の羞恥では済まない現実がやって来る、と想像出来る。
勿論、西岡が書いた意味も理解出来る。
美樹は無言で、左手をスカートのポケットに滑り込ませた。