特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.2-2
(下着をつけずに過ごすなんてッ)
美樹、こと島原美樹(シマバラ ミキ)はかなりご立腹の様子である。
課題を出されて、すぐさまセフレ(美樹はそう思っている)の大河内に問い質したが、結局、自分もレポートを提出しなければならない。
少しは譲歩して貰えると、甘い考えを持っていたので反動は大きかった様だ。
(昨日から十四日。土日も抜くと…九日。試験日も抜くと……八日しかない)
指折り数えて溜め息を吐き、駅のトイレに駆け込む。
(………誰も確認なんてしないよね)
自分にそう言うと、ピンク色のショーツをクイッと下げた。
(痛いッ、誰よっ、今、足踏んだのッ)
イライラしながら美樹は電車の揺れに身を任せていた。
身長152cm。小柄だけど胸だけはたっぷりある美樹はクラス1可愛いと評判の女の子だ。………しかし、今この場では只の背の低い女子高生。吊り革に掴まる余裕も無く、酸欠や親父臭、香水臭に負け無い様にハンカチで口許を押さえている。
………?!…
不意に、スカートが捲れた感じがして、美樹はお尻を肩掛け鞄で隠す。
(気のせい…だよね)
美樹は何気ない風を装ってお尻に力を入れる。
そう、この短いチェック柄のスカートの下は、Tバックショーツなのだ。
(履かないで…なんて言われたって、肌身離さす着けてた物なんだから。Tバックだって冒険なんだし、いいよね)
心の中で、ぺろっと赤い舌を出して美樹は電車の流れに身を委ねた。
「西岡ぁ〜、お前、課題やったか?」
声のトーンを落とす事無く、ケラケラと笑いながら矢田智春(ヤダ トモハル)は声をかけた。
「うんにゃ。全くやってない」
その質問に恥じらいすらなく、彼、西岡忍(ニシオカ シノブ)はヘラヘラと返事をした。
「呑気だなぁ。俺なんて化学落としたらヤバいもん。必死だぜ?」
「俺もヤバいけど…まぁなんとかなるっしょ」
西岡はのらりくらりと会話を乗り切って自分の席に着いた。
(まぁ、どーにもならなかったら…強行手段に出れば良いし)
にやっと笑って窓の外に視線を移す。
どうにも掴めない、それが西岡だ。何か策が有るこの男は、余裕の表情で口笛を吹いた。
しかし、そこに
「西岡〜ッ!どーしよっ!??」
「んな、落ち着けって、清水ッ」
足音を荒げ、教室に入った清水は西岡に駆け寄った。
「どーしよって何をだよ」
清水は手招きをして耳を貸せ、とのジェスチャー。西岡は不思議に思いながら耳を近付けた。
「……電車で、ノーパン婦女子発見っ」
耳を離して一瞬見つめ合う。のだが…
「嘘クセー。だから妄想魔人なんだって、お前は」
明らかに聞いて失敗したと落胆する西岡。
(んな調子良い婦女子が普通いるか!?)
本当だよーって喚く清水に耳もくれず、西岡はまた、窓の外に視線を移したのだった。
(……そう言う婦女子は実はあたしデース)
心の中で片手を挙げて、美樹は席に着いた。
運が良いのか悪いのか、美樹の席は西岡の隣りだ。
(でも生尻だけどTバックなのよっ。んもぅ、触ったなら金払えっつーの)
なんとも腹黒い女である。