ブラザー-7
「そう言えば名前は?」
「鮎川亜希子って言います。」
「亜希子ちゃんね!俺、神谷鉄平!」
「鉄平さんね!あなたは?」
「井上彰です。」
「彰くんね?よろしくぅ♪」
「あ、宜しくお願いします…」
ガチガチの彰を鉄平がいじる。
「カテーよ!まさかもうチンコまでガチガチなんじゃねーなー!」
鉄平はいきなり彰の股間をギュッと握った。
「ぎゃー!いてぇ!!」
悲鳴をあげる彰。
「アハハ!やぁだー!」
亜希子はケラケラ笑った。
「亜希子ちゃんて明るくて良く笑う子なんだね。」
「えっ?ど、どうしてですか…?」
「だってさっきコンビニで見た時は何か疲れ切っててどんよりしてたから。今と全然違うんだもん。」
「ああ、そうだね。いつもあんな感じかも知れないなぁ。毎日仕事遅くて、上司に怒られてげっそりして電車に乗って、クタクタでさ。とにかく早く家に帰りたいなって。周りから見たら疲れ切ったアラサーだなって思われても仕方ないかなって自分でも思う。」
「そっかー。仕事何してるの?」
「県庁の職員なんです。」
「あー、公務員だ!堅苦しそうだね、職場。」
「そうなんですよー。退勤時間過ぎても上司が帰らないから帰りずらくて。かと思えば最後に仕事預けて帰っちゃうし。今日中に仕上げろとか言って。もうやんなっちゃう…。」
「そりゃ大変だねー。疲れちゃうよねー。」
「はい。お二人は何のお仕事してるんですか?」
「ん?ホスト!」
「あはっ!嘘ばっかりー!」
「いやいや、マジマジ!ここらじゃ有名なホストなんだよ?彰が♪」
「ぼ、僕っ…!?」
「嘘!絶対嘘!キャハハ!」
「あー、バレた?」
「バレるってー♪」
「すみません…」
「輝、悪い事してないのに謝っちゃってるし!ヒデーなぁ、亜希子ちゃん♪」
「わ、私!?やだもー!♪」
さっき出会ったばかりだと言うのにもう友達のように話せる鉄平が羨ましく思った。
「じゃあそろそろ亜希子ちゃんの美声が聞きたいなー!」
「じゃあ歌いまーす!」
亜希子が曲を入れる。
「おっ!TWICE!!」
「私、K-POP大好きなの♪」
「俺も俺も!次はブラピン行ってよ!」
「オッケー♪」
堅苦しいスーツ姿からは想像出来ないぐらいのキュートな振り付けで踊りながらTWICEを可愛く歌いこなす亜希子は本当に楽しそうだった。