花のごとく〜痛みという快楽〜-5
子どもたちがすっていたそこはもはや母親の乳ではない。
官能の獣として、ただひらすら快楽を追い求めるだけの女のものである。
高まり早くなる喜一の息。
佳代は自ら体を降り続けた。喜一の額の汗が佳代に降り注ぎ、二人はずぶ濡れで
ある。
「ひッッ!……あゥ!!!!!」
ピストンはまるで光のように早く、馬車馬のように力強かった。ヴ○ギナは快楽に麻痺し、悦に浸る佳代にはペ○スとヴァ○ナはもう入れているのか出しているのかわからなくなっていった。
愛液と汗で濡れている。
玉がぶつかる音、佳代の喘ぎ声、尻と尻のぶつかり合う音、喜一の喘ぎ声。
運動が一体となり、すべてが高まりを迎え、絶頂がやってきた。
「いやぁぁぁぁぁ―――――!!!!!!!!!」
体のすべての血が全速力で駆け抜け、落雷が落ちたかのようなしびれが襲う。
足は引きつり、意識が遠のいた。
白い白い霧の中を漂う。
だれもいない。
霧は心地よく、あたたかだった。
しかし誰か奥にいるようだ。
よおく見ると喜一が微笑んでいた。
幼い頃と変わらない笑顔。
体は解放された、欲望も絶望からも。安らかな気持ちになり目をつぶる。
「お母さん、お母さん!!」
佳代が静かに目を開くと三女の佐知子が心配そうに顔をのぞき込んでいた。
「こんな所で寝ていたら風邪ひいちゃうわよ、もう夏も終わったんだし」
どうやら佳代はいつの間にかヴェランダでうとうとしていたようだった。
何かの夢を見ていたようだったがさっぱり思い出せない。
空気が少し冷えていて、ひざが痛んだ。
薬を飲まなければ。
そう思って立ち上がったが、さっきの佐知子の言葉が妙にひっかかっていた。
もう夏も終わったんだし…………
(そうね、確か、夏の夢を見ていた気がするわ………)
そんな気がして、幼い頃のように胸が切なくなった。
夏の終わりの切なさを、祈るように受け止める。
そのとき庭に風が吹いた。
「きゃっ…」
案外強く目をつぶり耐えたが、その風は心地よく…そしてなぜだか淡い花の香りがした。